その眠気もだるさも糖が原因? 正しく知って、糖質疲労を防ぐ
イラストレーション・おざわさよこ 構成&文・薄葉亜希子
糖質制限ブームもあってか、糖質に悪いイメージを持つ人は少なくない。
「本来、糖質は脳や体が活動するための大切なエネルギー源。重要な役割を担います」と話すのは、糖尿病専門医の薗田憲司さん。糖質はとりすぎてもとらなさすぎてもダメと続ける。
「炭水化物や甘いものは手にとりやすく満足感を得やすいので、つい食べすぎてしまいます。一方で、まじめな人ほど控えようと我慢して摂取量が足りていないことも。どちらも、血糖値が急激に上がって下がるという“血糖値スパイク”を招きやすくなります」
この血糖値の乱高下こそが、食後の疲労感の大きな要因だ。知っておきたいのは、年齢を重ねるほどこのスパイク状態が起きやすくなること。
「血糖値を適切にコントロールするにはすい臓から分泌される“インスリン”が要です。ところが、加齢や更年期などで体質が変わるとインスリンの分泌や反応も鈍くなってくる。とはいえ、日頃のちょっとした工夫で糖質疲労は充分防ぐことができます」
まずは一日の適正量を知り、3食きちんと糖質をとることから。食べる順番や食後のプチ運動も心がけたい。
「2週間ほど続けたら、体が軽やかに変わるのを感じられますよ」
糖質とは炭水化物から食物繊維を除いたもの
糖質のくくりの中に糖類があり、ブドウ糖や果糖、砂糖などがある。糖質はブドウ糖が鎖状に連なるでんぷんが主で、オリゴ糖やキシリトールなども含まれる。いずれも消化によってブドウ糖に分解、吸収される。
腸で吸収されて血液の中へ。血糖は体のどこへ行く?
血糖とは腸で吸収されて血液へ入ったブドウ糖のことで、血糖値はその濃度を指す。血糖値が上がるとすい臓から血糖値を下げるホルモンのインスリンが分泌。筋肉や肝臓に送られ、消費されずに余ると脂肪になる。
だるさや集中力の低下は血糖値スパイクのせい
健康な人も誰しも一日の中で血糖値は変化するもの。ゆるやかに上がったり下がったりするのが理想的だ。しかし、糖質量の多い食事や早食いによって右のグラフの赤線のように血糖値が急上昇すると、インスリンが過剰に分泌され、一気に急降下。「この乱高下を血糖値スパイクといいます。血糖値が下がるときに眠気や倦怠感を伴い、下がりすぎた反応性低血糖の状態になると、強い空腹感やイライラを感じます。健康診断で空腹時血糖が正常値でも、食後に不調を感じたらスパイクを起こしているかも。食生活を見直してみましょう」
血糖値の上がりやすさは年齢、遺伝、日常習慣がカギ
「もともと日本人は欧米人と比べてインスリンの分泌能力が低い体質です。肥満でなくても糖尿病リスクを抱える人は多く、遺伝の要素も大きいんですね。また加齢によって全身の機能が落ちてくると糖質疲労を招きやすくなります」。さらに血糖値とホルモンバランスは密接に関係する。更年期で女性ホルモンが低下すれば、インスリンや成長ホルモンなど複数のホルモンのバランスにもひずみが生まれ、血糖コントロールが効きにくくなる。「インスリンの効果を妨げるような生活習慣をしていないかも注意。右の表でチェックしてみて」
✓ 3個以上当てはまったら要注意!
□40歳以上である
□家族に糖尿病の人がいる
□毎日朝食を食べない
□3食中1食は早食い(10分以内)、もしくは大食い
□食後すぐに横になる、座ったままでいる
□脂っこいもの、甘いものをよく食べる
□運動は週3回未満
□睡眠6時間未満が週3回以上
□ストレスが多い
□20歳の頃より体重が10kg以上増えた
制限しすぎもダメ! 糖質の適正量を知る
糖質疲労を防ぐには血糖値上昇の山をできるだけなだらかにすること。それには適正量をきちんととる“ゆる糖質制限”を心がけたい。「たとえば、身長が160cmの人なら一日の糖質量は200gが目安です。1日3食として1食あたり60gほど、おにぎり1個分よりも多い量になります。女性は更年期を境にコレステロール値が上がりやすいので、糖質を制限しすぎる代わりに脂質過多にならないように注意を。そのためにも適切に糖質をとりましょう」。まずは主食の糖質量を頭に入れることから。糖質と上手につきあい、健やかに過ごしたい。
『クロワッサン』1149号より
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