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『巨匠ハインツ・ヴェルナーの描いた物語―現代マイセンの磁器芸術―』泉屋博古館東京──名窯の一時代を支えたアーティストの創作の軌跡を辿る

青野尚子のアート散歩。今回は、夢の世界へと誘う魅惑的なデザインで現代マイセンを代表する名品の数々を生み出した、ハインツ・ヴェルナー。彼の作品を中心にマイセンの輝きの秘密を探る展覧会が開かれる。

文・青野尚子

ラウンドケーキプレート《アラビアンナイト》コーヒーサービスより マイセン 1967年頃~ 個人蔵 装飾:ハインツ・ヴェルナー 器形:ルードヴィッヒ・ツェプナー
ラウンドケーキプレート《アラビアンナイト》コーヒーサービスより マイセン 1967年頃~ 個人蔵 装飾:ハインツ・ヴェルナー 器形:ルードヴィッヒ・ツェプナー

18世紀に王立の磁器製造所として創業したドイツの名窯、マイセン。1960年に創立250周年となったマイセンは新しい時代を切り拓く5人のアーティストを迎える。その一人、ハインツ・ヴェルナーは夢の世界へと誘う魅惑的なデザインで現代マイセンを代表する名品の数々を生み出した。彼の作品を中心にマイセンの輝きの秘密を探る展覧会が開かれる。

ハインツ・ヴェルナーは1928年生まれ。15歳でマイセン磁器製作所内の養成学校に入学、1950年代には絵付師として頭角を現した。彼はマイセンの長い伝統の中で生まれた作品、とくに18世紀の絵付師ヨハン・グレゴリウス・ヘロルト時代のものを熱心に研究したといわれる。その成果は《アラビアンナイト》や《サマーナイト》といった代表作や、《森の狩り》などのシリーズに結実した。テーブルの上に華やかな彩りが広がる名品だ。

1975年からはたびたび日本を訪れ、美しい風景に魅了されたという。1980年代からは抽象的な、生命力に満ちた色と線からなるデザインを手がけた。ヴェルナーは2019年に亡くなるまで新境地に挑み続ける。その背景には新たな窯や彩色法など、マイセンの積極的な技術開発があった。

会場にはマイセン創業当時、日本からヨーロッパにわたった柿右衛門様式の器も並ぶ。色鮮やかな磁器に注ぎ込まれたヴェルナーの情熱と、日本との交流がうかがえる展覧会だ。

『巨匠ハインツ・ヴェルナーの描いた物語(メルヘン)―現代マイセンの磁器芸術―』

泉屋博古館東京 開催中~11月3日(月・祝)

ヴェルナーはブルク・ギービヒェンシュタイン美術大学の名誉教授となり、後輩たちと合作するなど教育者としても活躍した。

泉屋博古館東京(東京都港区六本木1-5-1)  TEL:050-5541-8600(ハローダイヤル) 11時~18時(金曜~19時) 月曜、9月16日、10月14日休(9月15日、10月13日、11月3日は開館) 入館料一般1,500円ほか
《サマーナイト》ティーサービス マイセン 1974年頃~ 個人蔵 装飾:ハインツ・ヴェルナー 器形:ルードヴィッヒ・ツェプナー
《サマーナイト》ティーサービス マイセン 1974年頃~ 個人蔵 装飾:ハインツ・ヴェルナー 器形:ルードヴィッヒ・ツェプナー
  • 青野尚子 さん (あおの・なおこ)

    アート・建築関係のライター

    著書に『超絶技巧の西洋美術史』(池上英洋さんとの共著、新星出版社)など。

『クロワッサン』1148号より

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