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涼やかな、夏の誘惑。白玉、ところてん、冷やし甘酒──ノスタルジックな甘味の名店4選

涼を呼ぶ和の甘味は、今も昔も夏の楽しみ。時を超えて、進化しながら現代に伝わる味を名店で楽しんで。

撮影・川上朋子 文・西村佳芳子

天野屋(神田)

冷やし甘酒とくず餅のセット755円。くず餅は季節によって配合を変え、オリジナルレシピで専門店に特注しているという
冷やし甘酒とくず餅のセット755円。くず餅は季節によって配合を変え、オリジナルレシピで専門店に特注しているという

夏の疲れを冷やし甘酒で癒やす
栄養を豊富に含む甘酒は、医者の少ない時代に重宝され、砂糖の代わりにも活躍。特に井戸水で冷やした甘酒は、夏の江戸の風物詩でもあった。弘化3年(1846年)、神田明神の参道を下り、中山道に出た場所にどぶろくの店として創業した『天野屋』。地下に糀室にぴったりの土室があり、甘酒を作ることに。周りには坂が多く、参拝帰りの人々は甘酒で体力を回復したという。米と糀だけで作られる甘酒は、夏の疲労回復にぴったり。冷やし甘酒とくず餅またはミニおでんとのセットもあり、風情ある店内で江戸気分を味わえる。

併設するショップで販売する「明神甘酒(生)」600g 1,135円。家でも簡単に甘酒が飲める。そのほか味噌や納豆も製造販売
併設するショップで販売する「明神甘酒(生)」600g 1,135円。家でも簡単に甘酒が飲める。そのほか味噌や納豆も製造販売
店頭では甘酒を飲み歩きしやすい紙コップで買える
店頭では甘酒を飲み歩きしやすい紙コップで買える
千代田区外神田2-18-15  TEL:03-3251-7911 (営)10時~16時 火曜休

甘味処 初音(人形町)

「クリーム小倉白玉」1,200円。サービスのお茶は茶釜で沸かした湯で淹れた煎茶
「クリーム小倉白玉」1,200円。サービスのお茶は茶釜で沸かした湯で淹れた煎茶

もっちりとした白玉は職人の技
甘味処のおやつの名脇役である白玉だんごも、江戸時代には庶民に浸透しはじめていたという説がある。天保8年(1837年)に開店したこちらは、特に白玉のおいしさで人気を集める名店。コシを強くするために粉を厳選し、練りの作業を怠らず、もちもちと弾力はありつつも柔らかく、独特な食感に。数ある品の中でも、白玉を主役にあずきと合わせ、バニラアイスクリームを添えたクリーム小倉白玉がおすすめ。“特A級”の十勝産小豆で作るふくよかな粒あんと白玉だんごをアイスがつなぎ、三位一体となった味を楽しめる。

歌舞伎の名作『義経千本桜』に登場する「初音の鼓」にちなんで命名された店。内装には鼓をモチーフにしたデザインがちりばめられている
歌舞伎の名作『義経千本桜』に登場する「初音の鼓」にちなんで命名された店。内装には鼓をモチーフにしたデザインがちりばめられている
小倉白玉やあんみつはテイクアウトも可能で、遠くから買いに来る人も(賞味期限は当日中)
小倉白玉やあんみつはテイクアウトも可能で、遠くから買いに来る人も(賞味期限は当日中)
中央区日本橋人形町1-15-6 五番街ビル1F  TEL:03-3666-3082 (営)11時30分~17時30分 火曜休

今菓子司 銀座凮月堂(銀座)

「抹茶クリームあんみつ」ドリンクセット2,700円。果物は季節によって変わる。産地直送で、夏には桃やマスカットが使われる。食器は併設のギャラリーで展示する現代作家のもの
「抹茶クリームあんみつ」ドリンクセット2,700円。果物は季節によって変わる。産地直送で、夏には桃やマスカットが使われる。食器は併設のギャラリーで展示する現代作家のもの

アートのように組み立てるクリームあんみつ
江戸時代末期に登場したとされるみつ豆に、あんこをのせたあんみつは人気の定番メニューだが、今、その進化系を食べるならここ『銀座凮月堂(ふうげつどう)』。伝統の甘味を今風に再解釈したデザートを昨年6月にリニューアルした喫茶室で楽しめる。洗練されたビジュアルのあんみつは、白と黒(黒蜜)の寒天、白と緑(抹茶)の白玉、球体にくりぬかれたこしあんなどを、アイスと黒蜜の甘みだけで食べるという大人向けの仕立てだ。すべてのパーツが美しく、一つ一つ丁寧に目の前の作業台で盛られていく工程に、食べる前から心ときめく。

『銀座凮月堂』茶房マネージャーの森杉浩祐さんがカウンター越しに作り上げていく
『銀座凮月堂』茶房マネージャーの森杉浩祐さんがカウンター越しに作り上げていく
店内は5席のみ。予約推奨
店内は5席のみ。予約推奨
中央区銀座6-6-1 銀座凮月堂ビル3F  TEL:03-3572-1777 (営)11時~18時(17時LO) 木・金曜休

浅草いづ美(浅草)

端正に重ねられた姿にうっとりしてしまう「ところてん」各900円は、複数の天草をブレンドして作っている。タレは、特製の酢醤油&からし&海苔、または黒蜜の2種から選べる
端正に重ねられた姿にうっとりしてしまう「ところてん」各900円は、複数の天草をブレンドして作っている。タレは、特製の酢醤油&からし&海苔、または黒蜜の2種から選べる

東西で異なるところてんの粋
ところてんの歴史は古く、起源は1300年前まで遡るが、庶民に親しまれるようになったのは江戸時代。当時は行商人が天秤棒で売り歩いたおやつで、砂糖が高価だった関東では酢醤油とからし、食材が集まる関西では黒蜜を添えるのが主流だったという。浅草育ちの店主は、幼少期に祖母が作ってくれた甘味のおいしさを伝え残すべく、選び抜いた素材で作り続けている。天草(てんぐさ)のほのかな香りと喉越しの良さが清涼感たっぷりだ。海苔とからしを加えた酢醤油で江戸風もよし、こくのある黒蜜で上方風を楽しむのもまたよし。

店内には竹林と日本庭園が庭師の手により作られ、しっとりと落ち着いた雰囲気。壁には店主の祖父であり挿絵画家・田代光さんの作品が飾られている
店内には竹林と日本庭園が庭師の手により作られ、しっとりと落ち着いた雰囲気。壁には店主の祖父であり挿絵画家・田代光さんの作品が飾られている
台東区浅草1-8-6  TEL:03-5806-1620 (営)11時30分~18時(17時30分LO) 無休

『クロワッサン』1145号より

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