料理研究家・野口英世さんのとっておきの器を拝見。
撮影・徳永 彩(KiKi inc.) 構成&文・薄葉亜希子
料理の時間を豊かにする、愛着のある器。
「あれにもこれにも使えそうとメニューが思い浮かんだら、その器は〝買い〟です」と、器選びのコツを教えてくれたのは料理研究家の野口英世さん。
「洋服を買うときに手持ちの服とのコーディネートを考えるのと同じ感覚でしょうか。背伸びせず、自分の生活に合うもの。無理しない使い方ができる器は自然と用途も広がります」
そう語る野口さんが万能選手として挙げたのが、オーバル形にスーププレート、片口、ガラスの器と個性豊かな顔ぶれ。いずれもシンプルなデザインながら凛とした雰囲気が漂う。
「もともと白い器が好きですし、和洋中、お菓子まで使えるので多くなりますね。ただひと言で白といってもその質感はさまざま。こうして見ると、私は真っ白よりもどこか柔和な感じのするものに惹かれるようです」
純粋に自分の〝好き〟に従い選んだ器は、料理のやる気も増してくれる。
「家事や仕事に忙しい毎日、お気に入りの器で食を楽しむのは、まさに自愛のひとときです」
オーバル皿
和洋中選ばない万能器の代表格。
「軽くて美しく、料理が映える」と、お気に入りの右の山本拓也さんのオーバル皿。横浜の器専門店『手音』で購入。「上に重ねた小サイズはお店のリクエストで出来上がったのだそう。小ぶりながら適度な深さがあり、取り皿にもデザート皿にも使います」。ぶどうをのせた和皿は村上雄一さん、2枚の小皿は砂田政美さんの作品。どちらも年に数回足を運ぶ松本市の『ギャルリ灰月』で見つけたもの。銀彩で縁取ったKODAMA TOKIの皿はクールな趣ながら、魚料理などの和のおかずを盛りつけてもさりげなくなじむ。「オーバル皿には料理をしたくなる不思議な魅力があります。丸皿が並ぶ中で食卓のアクセントになり、収納も省スペースですむ。使わない日はないくらい出番が多いです」
ガラスの器
調理、保存、テーブルウェアにも。
機能美も備えたミニマルなデザインが野口さんの選ぶポイント。「右の2つは小泉硝子製作所。futa to mi(ふたとみ)という名前で、組み合わせると保存容器になり、それぞれお皿としても使えます。左のリュミナルクの角形は耐熱仕様なのでレンジでひとり分のパスタを茹でたり、ソースやマリネ液をつくったり。廃盤ですが、20年以上愛用しています」。さらに食器以外にも、花器や物入れにも活用。奥はさこうゆうこさん作のガラスボウル。「いつもちょっとした物を入れてキッチンに置いてあります。華奢でオブジェ的な佇まいが気に入っています」
片口
思い切り〝好き〟な形を使い倒す。
酒器にこだわらず自由に使い、テーブルの彩りにする。存在感のある片口は多く揃える必要はないため、本当に気に入った器を吟味するそう。「手前はガラス作家・井上美樹さんのもの。今日はいちじくとチーズの取り合わせで。こんなふうに洋風のおかずを合わせるのもワクワクしますよね」。左の白とブルーの大小は唐津の旅で出合った中里花子さんの作品。奥はスエトシヒロさんの小ぶりな片口。ドレッシングや調味料を入れて「ちょこんと置いた姿がすごく愛らしいんです」。食卓の景色を新しくする片口の活用法、さっそく真似してみたい。
スープ皿
直径19センチが私の定番。
きれいな翡翠色の皿にきのこのマリネとみょうが、すだちを添えて。「洋食器ですが、和や中華の惣菜も不思議と相性がいいんです。手前の2枚はフランスの窯元Jars(ジャス)。東京・代官山の『チェリーテラス』で購入しました。19センチのサイズ感がとても使いやすく、スープ皿を最初に手に入れるなら18〜20センチを目安にするといいかもしれません」。奥は青山の『ドワネル』で見つけたクリスチャンヌ・ペロションのストーンウェア。「お揃いもいいのですが、同じサイズで色や素材の異なる皿を組み合わせるのもおすすめ。どこかこなれた印象になります」
『クロワッサン』1125号より
広告