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「とらやさんがあるから引っ越した」、料理研究家・髙山かづえさんが世田谷の牛肉店を愛する理由。

料理研究家・髙山かづえさんが通う、最高級の神戸牛をはじめ、豚、鶏ともに銘柄肉を扱う『とらや牛肉店』。世田谷の商店街ガイドとともに紹介します。

撮影・青木和義 構成&文・堀越和幸

買って、学んで、料理する、 髙山かづえさんの 「とらや」物語。

「今日はステーキにしようかな。」髙山さん 、「なら、このランプ肉だよ。」とらや店主、佐藤さん
「今日はステーキにしようかな。」髙山さん 、「なら、このランプ肉だよ。」とらや店主、佐藤さん

“とらやさんがあるからここへ引っ越しました。”

料理研究家の髙山かづえさんは世田谷区のとある町に住んでいる。歩いて数分のところに祖師谷の商店街がある。

「3年前にここに引っ越してきたのですが、いろいろな街の物件をいくつか絞り込んでいく中で、最後の決め手となったのがこの町には『とらや』さんがあるということでした」

正式名称は『とらや牛肉店』。実は髙山さんはこの名前をもう何年も前から知っていた。料理研究家として独立する前、まだアシスタントだった頃、師匠の川津幸子さんが西荻窪の『とらや本店』を贔屓にしていて、肉といえば必ずここで買い求めていたから。祖師谷のとらや店主、佐藤欽作さんはその本店で修業をし、この地に店を構えて39年になる。

とらやがきっかけで住み始めたけれど、気づいてみれば商店街には暮らしに欠かせない個人店がそろっていた。それらの店は通うたびに発見と学びを与えてくれる。

「『魚武』さんにはいつも旬の魚が、しかも丸で置いてあるものも多く、料理の選択肢を広げてくれます。『ラトリエ ドゥ プレジール』はここに越す前から通っていたパン屋さんで、小麦の種類や特徴を丁寧に説明してくれる。私は日本一美味しいパン屋さんだと思う」

『春風駘蕩』はイタリアやフランスで修業を積んだ店主が営む欧風料理のレストランだ。

「3年前からワインショップも始めていて、ナチュールはどの系統から飲むとわかりやすいなど、いろいろと学ぶことが多い」

とらやへは週1〜2回ペースで通い、ほかにお客さんがいなければ佐藤さんをつい長話に付き合わせてしまう。お肉についてのあれやこれを丁寧に教えてくれるから。

「その料理にするならこの部位がいいよとか、アドバイスが的確で。焼き方からソースの作り方、お肉の等級といった専門知識まで、ここで教えていただいたことは山のごとくです」

とらやの肉はなぜ美味しい?

ショーケースのカウンター越しに、髙山さんは調理場で作業をする佐藤さんの手をつい目で追いかけてしまう。

「いい色でしょう?」自分が買うつもりで仕事をするというのが、佐藤さんの昔からのポリシー。
「いい色でしょう?」自分が買うつもりで仕事をするというのが、佐藤さんの昔からのポリシー。

髙山さんが地元商店街の個人店を愛する理由。

とらや牛肉店

髙山さん「良い肉は…」、佐藤さん「シンプルなお料理で。」
髙山さん「良い肉は…」、佐藤さん「シンプルなお料理で。」

店主の佐藤さんは、学生時代に西荻窪の本店でアルバイトをしたのをきっかけにこの世界に入る。20代の頃におかみさんから聞いた〝お肉をお客さまに渡す時は、娘をお嫁に出す気持ちで〞の言葉は今も忘れない。「佐藤さんの誠実な仕事ぶりに触れると心が浄化されます」(髙山さん)。最高級の神戸牛をはじめ、豚、鶏ともに銘柄肉を扱う名店。

●東京都世田谷区砧8・4・18 ホワイトハウスビル1F 
TEL.10時〜19時30分 
月・火曜休

春風駘蕩(しゅんぷうたいとう)

「料理に合う、ヴァン・ナチュールを。」店の一角でワインショップを展開。ショップだけの利用客も多い。
「料理に合う、ヴァン・ナチュールを。」店の一角でワインショップを展開。ショップだけの利用客も多い。

ソムリエの資格を持つ髙山さんは好きなブルゴーニュや日本のワインはネットで買うことも多い。が、情報が乏しいナチュールはなかなか選び切れなかった。「そんな時、大元の古い造り手から押さえてみるといい、と教えられました」(髙山さん)。揃うワインは180種、600本。3,000〜4,000円が最多価格帯、というのもうれしい。

店主おすすめの2本。右・〈アントニオッティ〉プラマルテル(赤)3,850円。左・〈オルトレトッレンテ〉ティモラッソ・コッリ・トルトネージ(白)4,620円。
店主おすすめの2本。右・〈アントニオッティ〉プラマルテル(赤)3,850円。左・〈オルトレトッレンテ〉ティモラッソ・コッリ・トルトネージ(白)4,620円。

●東京都世田谷区祖師谷3・34・9 OKビル B1F
営業時間:18時〜23時(ワインショップは15時〜) 
火曜休 
https://shunpu-taitou.info/

魚武(うおたけ)

「旬の魚で季節を感じます。」牡蠣の時季には焼きに向いている牡蠣の種類を教わった。
「旬の魚で季節を感じます。」牡蠣の時季には焼きに向いている牡蠣の種類を教わった。

旬の魚がとにかく豊富。例えばある日の開店前に並んでいた刺身が、アイナメ、ヒラメ、ヤリイカ、スズキ、ヒラメ、オコゼ……これでまだ出切っていない。「魚の扱いも勉強になります」(髙山さん)。下ろした身は必ずキッチンペーパーで挟む。これはすぐに真似をした。魚は丸で買えばアラが出る。「それがまた良い料理に。私には宝物です」

「とらやさんがあるから引っ越した」、料理研究家・髙山かづえさんが世田谷の牛肉店を愛する理由。

●東京都世田谷区祖師谷1・37・9 アピア均整院
営業時間:11時〜19時 
日・月曜休

L'atelierdePlaisir(ラトリエ ドゥ プレジール)

「ずっしりとした食べ応え!」ぶどう果汁だけで練り上げたパン生地に、8種のフルーツや6種のナッツなどを練り込んだ〈パン オ フリュイ ルージュ2022〉。
「ずっしりとした食べ応え!」ぶどう果汁だけで練り上げたパン生地に、8種のフルーツや6種のナッツなどを練り込んだ〈パン オ フリュイ ルージュ2022〉。

15年くらい前からこの店にはよく来ていた。「小麦粉の種類が多くて、自家培養をした発酵種を使って作る美味しいパン屋さん」(髙山さん)。ミッシュという田舎パンが大好物で、モチモチとした食感や酸味はこのパンならでは。「時に桜エビや鰹節といった意外な食材を練り込んだパンも店頭に出ていて、自由な発想に学ぶことが多い」

「とらやさんがあるから引っ越した」、料理研究家・髙山かづえさんが世田谷の牛肉店を愛する理由。

●東京都世田谷区砧8・13・8 
営業時間:12時〜18時 
日・月・木曜休 
http://www.plaisir1999.com/

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