アジアの才能を世界に紹介するBTSリーダーのソロ作の意義。【高橋芳朗の暮らしのプレイリスト】
RM「Right Place, Wrong Person」
メンバーの兵役履行に伴って2022年以降はソロ活動に軸足を置いている韓国の7人組ボーイグループ、BTS。そんななか、昨年12月より陸軍に服務中のRMが入隊前に完成させていたアルバム『Right Place, Wrong Person』をリリースしました。
BTSの各メンバーがソロ作品で打ち出している音楽は、実に多種多様。新しいタイトルが発表になるたび、こんなにもバラエティに富んだ音楽性を内包していた集団だったのか、と驚かされています。
特にリーダーでラップ担当のRMが標榜するサウンドは、煌びやかなダンスミュージックで踊る一般的なBTSのイメージを刷新するインパクトがあるでしょう。2022年の初ソロアルバム『Indigo』に続く今回の新作に関しては、実験的、もしくは先鋭的との形容がしっくりきます。
そんなRMの最新アルバムを特徴づけている最大の要素は、東アジアのインディペンデントなロックシーンで活躍するミュージシャンを多数起用している点。そのなかには彼の母国である韓国はもちろん、台湾や日本のアーティストも含まれます。
おそらくRMが意図しているのは、ワールドワイドな人気グループの一員である自分の立場を通して、アジアの優れた才能を広く世界に紹介すること。全米チャートで初登場5位を記録する堂々たる成果を達成した『Right Place, Wrong Person』の意義は、時間の経過と共にさらに重みを増してくるはずです。
『クロワッサン』1123号より