『宇野亞喜良展 AQUIRAX UNO』東京オペラシティ アートギャラリー【青野尚子のアート散歩】
文・青野尚子
妖しくも美しい宇野亞喜良の世界へ。
無邪気さとエロティシズム、そしてちょっぴりの毒が同居する宇野亞喜良のイラストレーション。900点を超える作品による、東京では初めての大回顧展が開かれる。
宇野は1934年生まれ、50~60年代に新聞広告や企業広告で頭角を現す。当時はまだ一般的ではなかった「イラストレーション」「イラストレーター」という言葉を広めたのは彼の功績といっていい。
展示は学生時代のスケッチなど初期の作品から始まる。日本デザインセンター時代の企業広告や、膨大な数のポスター作品の中には見覚えのあるものもあるかもしれない。絵本や児童書では内容によって多彩な技法を使いわける、その幅の広さにも驚かされる。
70~80年代に出版された版画集や作品集は過去の様式を求めるクライアントワークから離れて、自身にとって新しいスタイルを模索するためのものだった。ここでは裸婦像などよりリアルな表現を追求している。
演劇の仕事では舞台装置だけでなく衣装やメイク、演出や脚本まで総合的に関わっている。個展に出品することもある彫刻とあわせて、二次元のイラストレーションが立体化したような空間が味わえる。
展覧会では松尾芭蕉や寺山修司の句をテーマにした作品や、椎名林檎らクリエイターとのコラボレーションなどの近作も並ぶ。万華鏡のような宇野亞喜良の世界に浸れる展覧会だ。
原画の繊細なデッサンや校正紙に書き込まれた指示など、見る機会の少ない資料が並ぶ。『白い祭』など3本の短編アニメーション映画や、大道具などの舞台美術も見どころだ。
『宇野亞喜良展 AQUIRAX UNO』
4月11日(木)~6月16日(日)
●東京オペラシティ アートギャラリー(東京都新宿区西新宿3・20・2)
TEL.050・5541・8600(ハローダイヤル)
11時~19時 月曜休(祝日の場合は翌火曜休)
入場料一般1,400円ほか
『クロワッサン』1115号より