片岡愛之助さん『翔んで埼玉〜琵琶湖より愛をこめて〜』は「役者人生の中で3本の指に入る名作になりました。」【今会いたい男】
片岡愛之助さんのすべての始まりは大阪愛でした。
撮影・天日恵美子 文・木俣 冬
「役者人生の中で3本の指に入る名作になりました。」
「役者人生のなかで3本の指に入る名作になりました。撮影中、毎日がお祭りのようで、撮了が寂しかったです」
映画『翔んで埼玉〜琵琶湖より愛をこめて〜』を愛でる片岡愛之助さん。大阪府知事・嘉祥寺晃(かしょうじあきら)役を、大阪出身ならではのネイティブな言葉と、大阪愛と派手な衣裳とメイクで演じきった。
「僕の地元・堺を舞台にした歌舞伎『夏祭浪花鑑(なつまつりなにわかがみ)』の団七九郎兵衛を演じるときのように、大阪の言葉を話す役は等身大でできてホッとします。嘉祥寺は、等身大というにはデフォルメが強烈すぎて、最初はこれが大阪府知事?と戸惑いましたが(笑)。いざやってみたら、1ミリも悩むことはなかったです」
妻・藤原紀香さんと夫婦役で共演することにも悩みはなかった。
「夫婦で仲良くするだけの役だったらお断りするつもりでしたが、逆にバチバチな関係だったので、お引き受けしました。お客さまに楽しんでいただくことを第一に、やりきるところまでやったほうが面白いですよね」
歌舞伎で『ルパン三世』の話が来たときも「びっくりしました。アニメや漫画をもとにした歌舞伎も増えていますが、ルパン三世とは……」と驚きつつ、新作の創作に全力を注いでいる。
「オリジナルストーリーなので、あくまでルパン三世が歌舞伎の時代にいるということにしようと決めました。『白浪五人男』のようなイメージを……と思っても銭形警部は仲間じゃなくて泥棒仲間は4人。どうやったら成立するのか。でも面白くなると思います」
派手な衣裳も役柄も、お客さまに楽しんでもらうため。エンターテイナーの鑑だ。舞台、映像、ジャンルを問わず常に大胆に攻め続ける愛之助さんの契機は「平成若衆歌舞伎」(’02年)だった。
「上方歌舞伎の若手が集まって、僕が初めての座頭を務めさせていただいた公演です。梅田芸術劇場主催で、宝塚歌劇団の現役の生徒さんと歌舞伎俳優が共演するという企画でした。初めての座頭という経験で得るものも、ものすごく大きかったですし、その公演を見てくれた水野晴郎さんに声をかけてもらって『シベリア超特急5』(’05年)で映画デビューし、それを見た三谷幸喜さんが大河ドラマにキャスティングしてくれて……と、不思議なご縁で今があります」
自身の原点、上方歌舞伎への情熱が、活動の場を広げることに繋がった。『翔んで埼玉〜琵琶湖より愛をこめて〜』でのメイクは、歌劇団をかなり大胆にデフォルメしたイメージ。若き日の縁がここにも繋がっている。
『クロワッサン』1106号より