チェックリストでたどりつく、自分に合った介護施設の見つけ方。
文・高井紀子、中野幸子 イラスト・古谷充子
(1)まずは理想のライフスタイルを確認、整理。
あてはまる項目をチェック。同数の場合はA〜Eの優先順位もつけてみてください。
希望のチェックリスト
(A)あなたの趣味や習慣は?
□ 観劇、映画、コンサート、アートなどカルチャーに興味がある
□ やってみたいサークル活動や、習い事がある
□ 自由度の高い生活がしたい
□ 交通手段などの便利さがほしい
□ 今の暮らしをあまり変えずに、コンパクトにしたい
(B)住んでみたい場所がある?
□ 温泉地や都会など憧れの地域や場所がある
□ 交通が多少不便でも気にならない
□ 今住んでいる場所に執着がない
□ しがらみを抜け出したい
□ 人間関係はあまり気にならない
(C)今の人間関係は?
□ 子どもや孫に会いやすい環境がいい
□ 知り合いがたくさんいる地元から離れたくない
□ 習い事などは続けたい
□ 人とのつがながりを感じたい
□ 今の自宅を手放したくない
(D)あなたが挑戦してみたいことは?
□ ヨガや絵画などやってみたいアクティビティがある
□ 有機食材などにこだわりたい
□ 畑、ジムやプール、温泉など希望の設備がある
□ ペットと暮らしたい
□ 異世代交流などの社会貢献に興味がある
(E)現在の健康や介護度の不安は?
□ 元気なうちは食事や健康面だけケアしてほしい
□ 見守りサービスがあるところがいい
□ スタッフがすぐに呼べるところがいい
□ 認知症が進行しているなど、介護度が高い
□ 医療との連携が強い施設がいい
↓
(A)が多かった人は【アーバンライフ重視型】
定期的に芸術鑑賞などを楽しみたい場合や、気軽にショッピングなどに出かけたい場合は、都市部に住むのが快適。元気なうちはシニア向けマンションや健康型有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、将来の介護ケアを考えるなら住宅型有料老人ホームや介護付き有料老人ホームなど。価格は高めだが、選択肢は多い。
(B)が多かった人は【エリア重視型】
海が見える施設、リゾート地や温泉地に建つ施設。住んでみたい場所が決まっているなら、選択肢はぐっと絞られる。その土地で、介護度に合った施設を探してみよう。初めて住む地域の場合は、お店情報など周辺の環境をチェックしておきたい。
(C)が多かった人は【人間関係重視型】
今の人間関係を維持したい場合は、現在暮らしている地域、もしくはその地域までの交通アクセスのよいところで施設を探すのが良さそう。予算とも相談だが、施設を週末の一時的な住まいにして、徐々に本住まいに移行するという方法もある。認知症の場合は、家庭的な暮らしができるグループホームを検討しても。
(D)が多かった人は【施設の特徴重視型】
「有機栽培の野菜を使った食事」「畑作業、自給自足ができる」「天然温泉の大浴場がある」「動物を飼っている」など、施設が打ち出す特徴に注目して検討してみては。好みが合う人が集まる可能性もある。また、自分が挑戦したいアクティビティを実施しているところも視野に入れよう。
(E)が多かった人は【ケア重視型】
元気なときはシニア向けマンションに、介護が必要になったら住宅型有料老人ホームに移り住める施設もある。入居者数に対してスタッフが十分配置されているところも安心だ。費用が抑えられるのは特別養護老人ホームだが、要介護3以上の人かつ緊急性が高い人が優先で、希望してもすぐに入居できないケースが多い。
(2)候補施設の資料を見て「いいな」と思ったら見学へ。
候補施設が決まったら、取り寄せた資料やホームページを確認して、見学に行きましょう。
見学は、家を購入する気持ちで。比較検討をするために、5カ所以上に行くのが理想。
一人では気がつけない点もあるので、複数人で行くのがおすすめです。
(3)見学先の施設では、 ハードだけでなくソフトにも注目しましょう。
スタッフや食事内容なども、立地や料金などの概要や建物同様、暮らしの質を左右します。
見学時のチェックポイント
●スタッフ
□ 挨拶や態度に好感が持てたか
□ 入居者とのやりとりはどうか
□ 施設長の方針に共感できたか
施設の雰囲気はスタッフによってつくられている。スタッフが笑顔で挨拶をしてくれたか、イキイキ働いているかは、最初に確認したいポイント。スタッフに大きく影響しているのが、施設長の人柄や方針。施設長ともぜひ話をしてみよう。
●入居者
□ 入居者の年齢や趣味は
□ 身だしなみや表情は
入居先に話の合う人がいるのかどうかも気になるところ。年齢が近い人とは仲良くなれるきっかけがありそう。同じ趣味の人がいるか聞いてみるのも。また、入居者の身だしなみや表情は、スタッフのケアが行き届いているかの参考にもなる。
●食事
□ 味、量はどうか
□ メニューにバリエーションはあるか
□ 介護食、治療食に対応しているか
□ 食堂に清潔感はあるか
食事は毎日の楽しみのひとつ。月間の献立を見て、季節感があるか、セレクト食があるか、また、ワクワクするかどうかを確認したい。食事の確認方法は、体験入居をして3食味わうのがベスト。介護食、治療食の有無のチェックも忘れずに。
●居室
□ 広さ、明るさ、清潔感、段差
□ 希望の設備
最も多くの時間を過ごす居室の確認は入念に。収納、トイレ、洗面台、キッチン、呼び出しボタン、持ち込み可能な家電。生活設備の希望条件はあらかじめ決めてから見学へ。見守りサービスがある場合は、仕組みをしっかり聞いておこう。
●共有スペース
□ においや清潔感に問題はないか
□ バリアフリー対応かどうか
□ 入居者はどう過ごしているか
居室の次に長く時間を過ごす共有スペース。休憩するカフェを決めるときと同じような気持ちで確認してみよう。入居者の会話が弾んでいるかどうかは、居心地の良さを見るひとつの目安だ。バリアフリー対応だけでなく、防災対策も要チェック。
●入浴
□ 個浴、リフト浴、機械浴の有無
□ 時間帯や規定回数の有無
「いい湯」があるかどうかは、設備面とルール面で確認。リフト浴や機械浴があれば、介護度が上がった場合も安心して入浴できる。週の入浴回数が決められているところは、規定回数以上の入浴に追加料金がかかる場合があるので注意。
●その他
□ アクティビティの内容
□ 面会や外出、外泊ルール
□ 看取り対応
□ 退去基準
コロナ禍の面会ルールは確認しておきたいポイント。また、入居基準はもちろん、退去基準も大切な押さえどころ。長期入院や認知症が条件に該当することもある。安心して長く暮らせるように、介護度の変化を想定した確認をしておきたい。
気になる施設を見学する際は、自分自身のライフスタイルとあわせて、
上記の確認事項を参考にしましょう。
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