アイブロウサロン「mime」代表で着物好きの川島典子さんが選ぶ、ニッポンの手仕事。
撮影・三東サイ 文・田村幸子
暮らしにしっくりくる品を、真剣に選びます。
川島典子さんの着物好きは、祖母と母ゆずり。祖母の家には年2回、京都の呉服屋さんが出張してきていたそう。
「準備も始末もいまは亡き母任せでしたが、あるとき叱責されました。それから友だちと着付けを習い、ようやくひとりで着られるように」。
買った着物は桐箪笥にしまいきれないほどになった。
「年齢的にハイヒールがきつくなり、草履と着物がおしゃれ着。週2回、歌舞伎座に出かけます。もちろん、着物で」
最近のお気に入りの着物は、上田紬の染織作家・小山憲市さんの作品だ。
「多色使いの糸で紡いだ着物地は肌映りもよく、わくわくした気持ちにしてくれる。そこに藤岡さんの手組みの帯締めを。柔らかく締まるのにぴりっと結べるのには、ほれぼれします」
いわゆる伝統工芸ど真ん中より、木でできた藍染めの豆皿や、アフリカンプリントの傘などに惹かれる。
「手仕事だからすべていいとは思わない。作り手のアイデアや思いが伝わるもの、現代の生活にしっくりくるデザインで使い心地のいいものに出合いたい」
菓子をのせたり、茶托にしたり。 「工房やす」の 藍染めの木の豆皿。
出合いは好きな歌舞伎役者のインスタグラムで見た藍染めの酒器。「あまりに藍の色がきれいで。調べたら丸の内に出展されているのを知り、買いに走りました。直径8cmの豆皿には、表面加工がしてあり汚れにくい。私は中国茶の茶托にしたり、茶菓子をのせています。最近、26cmの藍染め大皿を買い足しました」(川島さん)
アフリカンバティックが和傘に変身。 こだわりの手作り 「Sun mi」の傘。
毎年行くほど好きな安芸の宮島。よく立ち寄る工藝店で扱っていたのがこちらの傘。「布の柄と同じ陶器をわざわざ焼いて留め具にしたり、本当に凝っているんです。縫製も丁寧。いかにもアフリカンな柄なのに、しっかり和のテイストになっているのが見事。洋傘よりもひと回り小ぶりで着物に欠かせない和傘です」
美しさだけでなく感動の締めやすさ。 伊賀上野 「藤岡組紐店」の 帯締めと三分紐、二分紐。
「伊賀にあるご家族全員が職人さんのお店ですが、こちらの帯締めを初めて締めたときの感動が忘れられなくて。抜群の締めやすさでしっかりと帯を支えてくれ、優しく体にフィット。デザインや色使いもよく、年に1本ずつ買おうと思いながら、2本買ってしまいます」
縦糸と横糸の織りなす美。 上田紬の染織作家・ 小山憲市さんの着物。
「草木染の繊細な縦糸と横糸の配列が本当に見事。そして、小山さんの上田紬は、なんといっても着心地がいいのです。袷はやさしく体にフィットするし、夏物の紬は羽衣のように軽やか。糸使いが繊細で緻密なので、無地よりもずっと奥深くて美しい」と川島さん。端切れから見えるその糸使いにため息がこぼれそう。
『クロワッサン』1054号より