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【紫原明子のお悩み相談】自分が優秀だという傲慢さを抑えきれなくなりました。

『家族無計画』や『りこんのこども』などの著書があるエッセイストの紫原明子さんが読者のお悩みに答える連載。今回は謙虚な姿勢を取り戻したい、20代の女性からの相談です。

<お悩み>
紫原さんこんにちは。  
地元で就職後、すぐに職場の人達から「優秀だ」と頼られ評価をいただけるようになりました。
初めのうちは、傲慢な気持ちが芽生えると「私は未熟者だから」と律することができました。
ですが、次第に上司の怠惰さやミスが目に付き始め、つい「なぜ経験の浅い私より仕事ができないのか。給料泥棒だ」等と思い、時々態度にも出てしまいます。そして、いつも後になって後悔します。
都会の大学に通っていた頃、周りの友人は能力も人柄も素晴らしく「私も彼女達に追いつこう」と努力し、謙虚な姿勢でいられました。「私はあの人に比べてダメだ」と苦しむこともありましたが、あの頃の自分に戻りたいのです。  
傲慢な姿勢は私生活にも悪影響を及ぼし始め、最近は友人とも距離を感じるようになり、見捨てられたのではないかと不安です。  
傲慢な人を好む人はいません。このままでは、職場でも私生活でも孤立してしまいます。
謙虚な姿勢を取り戻すには、何を心がければいいでしょうか。
(相談者:ちょこもなか/女性/実家で暮らしている、20代入社4年目の会社員です。恋人はいません。)

紫原明子さんの回答

ちょこもなかさん、こんにちは。

早速ですが、いただいたお手紙を何度も読ませていただきました。ですが、傲慢になりかけたご自分を律したり、悩んだ末にこうして相談してきてくださったりする方が傲慢だとは、やはりどうしても思えないのです。

ですのでおそらくちょこもなかさんは今、傲慢さに似た別の感情をつのらせているか、もしくは、傲慢さに似た振る舞いを、せざるを得ない状況下に置かれているか、もしかしたらその両方か、というところではないかと思います。

会社とか学校とか、毎日顔を出すコミュニティの中では、自分というのは決して、自分だけで決まるものではありません。あなたはここ、と与えられたデスクに毎日着席しているうちに、周囲からいつの間にか“あの席の人”として覚えられていくように、精神的にも、そのコミュニティの中での固有の役割を、やはり何かしら背負っていくことになります。

で、そういうのって、だいたいいつも、最初は楽しいものです。新しい役割を任されたり、新しい自分を見つけてもらったりすると、その先で新しい世界が見られるような気がするし、そう思えることそのものに希望があります。だから、少しくらいしんどくても、持ちこたえられます。

だけど、少しずつ時間が経ってくると、どうしても色々と現実が見えてきてしまいます。与えられた役割と自分の適性が、実はフィットしていないことに気付いてしまったり、あるいは、与えられた役割を全うした先に、実は大して素晴らしい世界は広がっていないことが分かってしまったり。

もしかしたら、そういったある種の閉塞感、行き詰まり感、退屈さ……つまるところの“欲求不満”が、今のちょこもなかさんの心の中を、少なからず占めているのではないでしょうか。

もし、少しでも心当たりがあれば、ぜひこの機会に、今、満たされていない自分の欲求が、どうしたら満たされるのかを考えてみてください。もっともっと、と貪欲になることは決して悪いことではありません。貪欲にやり続けた先で、やってもやっても満たされない、自分の欲求のバケツには穴があいているようだ、ということになれば、そのときはそのときで、改めてその問題と向き合わねばなりません。でも、そうかどうかも、まずはやってみないとわかりません。

環境はダイレクトに自分に影響するので、単純に、より挑戦的な、やりがいのある仕事を求めて転職されても良いと思います。地元でそれが難しそうなら、再度上京されたっていいのではないでしょうか。もし上京できないご事情があるとすれば、会社で満たされないものを満たせるような、やりがいのある副業を始めてみるとか、習い事も良いかもしれません。

いただいたお手紙から、ちょこもなかさんはとても責任感の強い方のようにお見受けします。ですから少なからず、自分のことは、あくまでも自分の責任でどうにかしなければ、と思っていらっしゃるのかもしれません。けれども自分って、本当は外の世界ともっと曖昧に繋がっているものだと思うのです。ですから、“どうして自分はこうなのか”ではなく、“何が自分をそうさせているのか”という視点で、ぜひ一度、ご自身のことを見つめてみてあげてください。

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イラスト:わかる
イラスト:わかる

紫原明子● 1982年、福岡県生まれ。個人ブログが話題になり、数々のウェブ媒体などに寄稿。2人の子と暮らすシングルマザーでもある。Twitter

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