貨物船で暮らす寡黙でやさしい猫、カンパチ船長。
カンパチ船長は海の猫だから、港に着いても船を下りない。内航船の操舵室と居住区を行き来して、船の安全と船員の健康を見守っている。
「めったにニャーって言わない静かな猫なんですよ。内航船というのは国内で貨物輸送をする船で、船員は交代で下船し休暇を取るんですが、カンパチ船長はずっと船内にいます」と人間の船長(こちらが本物です)・まさとさん。寄港地でも船員の誰かが必ず船に残って、カンパチ船長と一緒に留守番する。まさとさんはこの日、ちょうど休暇明け。「外から船に戻るとにおいチェックされるんですよ。これがもう、かわいくてね。あっ、今度はそちらへにおいチェックに行きましたね!」
物静かだが愛想よく、取材者のにおいを嗅いで身をすり寄せる。なんて魅力的な美猫なんだろう(できることなら連れて帰りたい……)。
「カンパチ船長は、船乗りになる前は名古屋のペットショップにいたんですよ。この船が名古屋に寄港したとき、たまたま私が通りかかって一目惚れしたんですね。それから本船の猫船長として昼夜を問わず、働いたり遊んだり寝たりしています」
カンパチ船長の主な仕事は、ワッチといって操舵室で窓から外を見張るのが1つ。巡検といって船内を点検して回るのが2つ。このとき全ての船員の部屋を回って心を癒やす、メンタルケアの役割も果たしているという。
「見てください。休暇で会わないうちに、いつのまにかカンパチ船長が立てるようになって……立ち上がって舵を取る真似をしてますよ!」まさとさん、感動して瞳をウルウルさせている。カンパチ船長が乗船して約1年、舵だりん輪と呼ばれる3つ目の仕事が新たに加わりそうだ。
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