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うっかり余らせてた野菜を美味しく保つ
かんたん下ごしらえ術。vol.1

うっかり野菜を余らせてしまった、そんなことがないよう、買ってきたらすぐにひと手間。料理研究家の植松良枝さんにきいたかんたん下ごしらえ術で常に美味しい状態に。今回は夏に美味しいトマトときゅうり。それぞれの下ごしらえ食材を使ったアレンジレシピも紹介します。

 
東京近郊に自らの菜園を持ち、定期的に土に触れ、野菜に触れている植松良枝さんにとって、料理の主役はいつでも、新鮮な野菜たち。

「季節によって穫れるものは異なりますが、当然ながら、成長して収穫が始まると待ったなし。同じ種類の野菜が一度にたくさん穫れてしまうので、保存法には頭を使います」(植松さん)

酢漬けにしたり、塩漬けやオイル漬け、下処理して冷凍するなど、さまざまな方法を試した上で、それぞれの野菜にぴったりな保存方法を見つけた。

「私のように野菜を育てていなくても、日頃スーパーで、旬の野菜や安売りのものをまとめ買いする機会も多いと思います。そんな時に活用していただきたい保存方法ばかりです」

「穫れたての野菜を使ってその場で調理する、ガーデンパーティをすることも」(植松さん)
「穫れたての野菜を使ってその場で調理する、ガーデンパーティをすることも」(植松さん)


酢、塩、オイルで保存すれば、
生で使うよりも美味しくなる。

野菜をまとめて保存するのはとても合理的な考えだが、植松さんの手にかかれば、そのまま使うよりも野菜がさらに美味しくなる点が魅力。

「野菜の滋味をしっかりいただきたいので、シンプルな味付けが基本です。使うのは、野菜が劣化していくのを防いでくれる、塩、酢、オイルの3種類が多いですね。塩もみや酢漬けをすることで、野菜の味がギューッと凝縮されて、煮物やスープなどに使うと、深い味わいになるんです」

オイル漬けや塩もみにする際、ローズマリーやタイムなど、ハーブを一緒に入れても美味しくなりそうだが、植松さんは下ごしらえの段階では、ほとんど風味づけをしないという。

「もちろん、それはそれで美味しいですけど、個性的な味にしてしまうと、いろいろな料理に応用しにくいんです。同じ考えで、ネギやしょうがなどの香味野菜も入れないようにしています。和食や中華などには合いますが、イタリアンやフレンチなどの料理には相性が合わないからです。保存野菜の味にパンチを利かせるために入れるのなら、にんにくがいいと思います」

まずは野菜本来の風味を生かして保存し、さまざまな料理に展開するのを習慣に。保存野菜があれば、調理時間が短く済むという利点もある。

「数種類の野菜が使えるので、栄養バランスも整いますよ。ただ、野菜の栄養のことを考えて、火にかける場合は蒸すことが多いですね。蒸せば茹でるより水っぽくならないし、栄養も逃げません。シャキッとした野菜の食感も残るので、ぜひ蒸すのをおすすめします」

今回、植松さんに提案してもらったのは、トマト、きゅうりの2種類の保存方法と、それらをアレンジしたレシピ。まとめ買いしやすい食材を、無駄にせず使い切りたい。

「買い物直後にほんのひと手間をかけておけば、普段の料理はラクになるし、さらに美味しくなりますよ」

サラダ野菜は手でちぎり水気を取る

包丁を使わないことが、野菜の鮮度を保つテクニック
新鮮な葉野菜は、包丁で切ると酸化しやすいので、手で葉をちぎって保存しておけば、5日ほどシャキッとした生野菜のサラダを楽しめる。レタスなど、水分の多い葉野菜は早めに消費を。

ルッコラ、トレビス、イタリアンパセリなど、適当な大きさに一気にちぎる。
ルッコラ、トレビス、イタリアンパセリなど、適当な大きさに一気にちぎる。
2.サラダスピナーやペーパー タオルを使い、野菜の水気をしっかり取り去る。
2.サラダスピナーやペーパータオルを使い、野菜の水気をしっかり取り去る。


3.徐々に出る水分の吸収用に、ペーパータオルに包んで保存袋に。
3.徐々に出る水分の吸収用に、ペーパータオルに包んで保存袋に。


 

トマトはスープやカレー、ピュレに活躍
酸味、甘み、旨みをプラスする

トマトの皮むきはけっこう面倒。でも、冷凍保存してしまえば、するりと皮がむけるという。
「大きさは問わず、プチトマトでもできます。大切なのは、完熟したものを使うこと」
冷凍してしまえば長期保存が利くし、熟したトマトのほうが味わい深くなって一石二鳥。
「皮むきしたトマトならスープやカレー、ピュレなどさまざまに使え、料理に酸味、甘み、旨みをプラスしてくれます」
その他、冷凍保存向きなのは、完熟した葡萄や、ブルーベリー、イチゴなどベリー系の果物。
「また、種を取ったゴーヤは、冷凍してパイナップルジュースとグリーンスムージーにすると、とても爽やかな味わいに」
トマトは洗って水気を取ってから、ヘタ付きのまま保存袋に入れて冷凍庫へ。
1.トマトは洗って水気を取ってから、ヘタ付きのまま保存袋に入れて冷凍庫へ。


2.室温に置いておけば、表面が解凍されて簡単に皮をむくことができる。
2.室温に置いておけば、表面が解凍されて簡単に皮をむくことができる。
3.半解凍の冷たいまま、他の 材料とミキサーにかければ、スムージーやサルモレホ、ガスパチョも簡単に。
3.半解凍の冷たいまま、他の
材料とミキサーにかければ、スムージーやサルモレホ、ガスパチョも簡単に。


海老トマトカレー

冷凍トマトのおかげで芳醇な味に。
冷凍トマトのおかげで芳醇な味に。
材料(3~4人分) えび8尾 バター60g おろしにんにく、おろししょうが各1かけ分 玉ねぎのみじん切り½個分 トマト〈大〉1個(解凍して皮をむき、小さめの角切りにする) 野菜スープ300㎖ プレーンヨーグルト½カップ A[酢小さじ1½ 塩小さじ⅓]カレー粉大さじ3~4 塩小さじ⅔~1 ご飯適量 アーモンドスライス適量


作り方 
1.えびは殻をむいて背わたを除き、Aをもみこむ。
2.鍋にバターの半量を熱して①を炒め、色が変わって反ってきたら一度取り出す。同じ鍋に玉ねぎを入れ、透き通って水分が飛ぶまで炒めたら、おろしにんにくとしょうがを加えて炒める。
3. 2にトマト、カレー粉、塩を加えて炒め合わせたら野菜スープとヨーグルトを加え、煮立ったら弱火で10分ほど煮込む。えびを戻し入れ、残りのバターも加える。
4.ご飯をよそい、軽く炒ったアーモンドスライスを散らし、3をかける。

 

サルモレホ(コルドバ風トマトの冷たいピュレ)

夏バテ予防にもいい、滋養強壮ピュレ。
夏バテ予防にもいい、滋養強壮ピュレ。
材料(作りやすい分量) 
冷凍トマト2個(半解凍で皮をむき、ざく切りにする) バゲット約5㎝ オリーブオイル大さじ2~3 酢小さじ2 塩小さじ¼ にんにく〈小〉1かけ ゆで卵1個 生ハム適量


作り方 
1.にんにくを深めのボウルに入れて塩をふり、しっかりなじむまでめん棒などで潰す。バゲットは水に浸して3~4分ほどおく。
2.ミキサーに水気を軽く絞ったバゲットとにんにく塩、トマト、酢、オリーブオイルを入れてなめらかになるまで撹拌する。
3.器によそい、粗く刻んだゆで卵と、刻み生ハムを上に散らす。

 

きゅうりは塩もみにすれば、2、3日もつ

きゅうりを塩もみするのはおなじみだけど、そのまま冷蔵すれば、保存にもぴったり。

「実は、塩もみ直後に調理するより味がなじみ、きゅうりの甘さがさらに生きてきます。また、水っぽさがなくなるので、サンドイッチの具に使っても、パンがぐずぐずになりません」

切り方は薄切りがおすすめ。

「薄切りだと応用が利くし、味がよくしまるからいいんです。ポテトサラダにも使えますよ」

塩もみの保存法は、ほかにも、カブや小松菜、ゴーヤ、キャベツ、白菜にも応用できる。

1.きゅうり3本(約300g)をごく薄い輪切りにしてボウルに入れ、塩6g(重量の2%)で和えて。
1.きゅうり3本(約300g)をごく薄い輪切りにしてボウルに入れ、塩6g(重量の2%)で和えて。
2.保存袋に入れ、水気が出るまで10分ほど放置したら、外側からやさしくもみ、冷蔵保存する。
2.保存袋に入れ、水気が出るまで10分ほど放置したら、外側からやさしくもみ、冷蔵保存する。


きゅうりのサンドイッチ

さっぱりした後味で、アフタヌーンティーの定番。
さっぱりした後味で、アフタヌーンティーの定番。
材料(1人分) きゅうりの塩もみ約100g サンドイッチ用食パン2枚 無塩バター適量
作り方 サンドイッチ用食パンに無塩バターを多めに塗り、しっかりと水気を絞ったきゅうりをのせてサンドし、なじませる。


たこときゅうりの酢の物

定番の酢の物も、より滋味深く仕上がる。
定番の酢の物も、より滋味深く仕上がる。
材料(2人分) ゆでだこ60g きゅうりの塩もみ1本分 みょうが1個 おろししょうが適量 A[だし汁大さじ3 醤油、酢各大さじ1 砂糖小さじ1½ 塩少々]
作り方 
1.小鍋に湯を沸かし、2㎜厚さの薄切りにしたたこをさっと湯通しして引き上げる。
2.きゅうりの塩もみの水気をしっかりと絞る。みょうがは縦半分に切ってから斜め薄切りにする。
3.ボウルに1、2を入れ、混ぜ合わせたAをなじませて器に盛り、おろししょうがを添える。


◎植松良枝さん 食材の旬を大切に、季節感溢れる料理を提案。野菜のレシピが得意。近著は、共著『春夏秋冬 土用で暮らす。』(主婦と生活社)。

『クロワッサン』926号(2016年6月10日号)より

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