くらし

『サカナ・レッスン 美味しい日本で寿司に死す』著者、キャスリーン・フリンさんインタビュー。 「一歩踏み出す。それで人生が豊かになります」

  • 撮影・黒川ひろみ
「魚が怖い」と言う日系アメリカ人女性に同情した著者は、日本にヒントがあるのではと考える。(村井理子さん 訳)CCCメディアハウス 1,500円
キャスリーン・フリンさん●料理家、ジャーナリスト。アメリカ・ミシガン生まれ。36歳でフランスのル・コルドン・ブルーを卒業。2007年、『The Sharper Your Knife‚ The Less You Cry』(邦題『36歳、名門料理学校に飛び込む!』)がニューヨークタイムズ紙のベストセラーに選出。

薔薇色の頰、親しげな笑顔。前作『ダメ女たちの人生を変えた奇跡の料理教室』(原題『The Kitchen Counter Cooking School』)では、包丁の持ち方も知らなかったアメリカの女性たちに料理の基本技術を教え、彼女たちが自尊感情を取り戻す過程を著した。同作は本国だけでなく、遠い日本でもベストセラーに。〈フェイスブックのアカウントに友達申請が殺到していることに私は気づいた。すべて日本人と思われる人々からで、その数は百人を超えていた〉

「それはとても驚くべきことでした」とフリンさん。

我が国の家庭内の家事分担化の度合いは世界的に見て極めて低く、食事を任される女性のプレッシャーは計り知れない。自分の料理に劣等感を世界一持っているのは恐らく日本人女性ーー。そう伝えると大きな目に涙を浮かべて頷いた。

今回は、教える側だった彼女が、あまり経験のない魚料理を日本で学ぶという内容だ。本書の英語版はまだ出ておらず、日本での出版のための書き下ろしだ。

築地でマグロの競りを見学し、場内でスシ・ブレックファストを食べ(ここでちょっとした事件が起こる)、寿司アカデミーで活アナゴと格闘する。〈アメリカでは、食べ物はめったに動かないのだ〉

彼女を通じて日本人も自国の食文化を改めて知ることができる。昆布を出汁から上げる時に木の菜箸はだめ、って知ってました?

本書の取材時期は2018年10月で、築地市場の最後の日々と豊洲の開場と重なった。築地のガイド役の男性と、フリンさんとの会話が胸を打つ。並んで隅田川を眺めながら、寂しくなりますね、と問う彼女に男性は言う。〈「悲しいですよ。でもね、ここをあなたに見せることができてよかった」〉

寿司学校での授業の合間に、近くの神社にある富士塚(富士山から運ばれた溶岩や土で丘を築いたもの。江戸時代に信仰の対象とされた)に登るフリンさん。高さ12
mの山頂で思いがけず開けた視界に感動し、記す。〈冒険や新しいことにチャレンジしたいのであれば、チャンスを手にして、努力することで、きっと報われる〉

「私がこの本で最もシェアしたいのは魚の知識ではありません。今は特に女性も多くのキャリアが持てる時代。自分が興味を持てることがあったら一歩踏み出してみること。それで見え方が変わり変化が起き、人生が変わるのです。『ロッキー』という映画を観たことがある? ロッキーはボクサーとしての成功を目指し努力を始めます。彼は最初の試合では勝てません。でも大切なのは、何かを始めて自分が変わることなの」

外からやってくる変化にも柔軟であれ、とフリンさん。本書には両親との思い出、そして訪れる変化について記された章もある。

「築地市場も移転の時期を迎えたように、人生にも変化が起こるもの。受け入れ、何かを学んで次に進みましょう。豊かな人生のために、Don’tbeafraidtochange(変化を恐れないで). それが私からのメッセージ」

『クロワッサン』1002号より

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