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口あたりとか、手触りとかを楽しむのが食器なんですからね――石川あき(「niagn」店主)

1977年創刊、40年以上の歴史がある雑誌『クロワッサン』のバックナンバーから、いまも心に響く「くらしの名言」をお届けする連載。今回は、うつわを楽しむ極意を取りあげます。

文・澁川祐子

1978年8月10日号「仕事に魅せられた3人の女性たち」より
1978年8月10日号「仕事に魅せられた3人の女性たち」より

口あたりとか、手触りとかを楽しむのが食器なんですからね――石川あき(「niagn」店主)

異なる分野で活躍する女性たち三人がこれまでの仕事人生を語る記事。そこから今回の名言は、六本木に「niagn」という南欧の洋食器を扱う店を開き、着物の目利きとしても知られる人物の言葉をピックアップしました。

石川あきさんは、若い頃に叔父である陶芸家・富本憲吉の影響を受けたことや、お茶を習ったことがきっかけでうつわ好きに。自由でおおらかな手づくりの地中海付近の食器に魅せられ、店を持つに至ったといいます。

誌面には、18世紀のマイセンのデミタスカップをはじめ、石川さんの古今東西のうつわコレクションが登場。それらを彼女はすべて使うと言い切ります。なぜなら、名言にあるように食器は使ってこそと思っているから。<こわれたら、それまで。しょうがないじゃない>と、なんとも潔いものです。

そんなうつわ使いの達人は、日本の食器は日本料理、外国のものは西洋料理なんてきまりはないでしょ、と語りかけます。

<赤い有田にクレープの黄色をのせたらどうですか? きれいでしょう?>
<オランダのマッカム、白地に紺だけを使って絵付けしたものですが、何にしようとして作ったのか、把手なしのカップみたいなのがあるんですよ。それなんて、酢の物を盛ると似合うの>

料理とうつわの色の対比がぱっと脳裏に浮かぶ、さすが達人ならではの言葉。それもこれも、たくさんのうつわにふれ、使い込んできた経験の積み重ねから発せられるものなのでしょう。

※肩書きは雑誌掲載時のものです。

澁川祐子(しぶかわゆうこ)●食や工芸を中心に執筆、編集。著書に『オムライスの秘密 メロンパンの謎』(新潮文庫)、編著に『スリップウェア』(誠文堂新光社)など。

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