猫の“どや顔”に癒やされる!?│山口恵以子「アプリ蟻地獄」
イラストレーション・勝田 文
猫をゴムのように引っ張って飛ばし、箱に入れるゲームアプリ。しろたま・くろたま・みけたま・ぶちたま等々、お好みにキャラクターを選んだら、ゲーム開始!
見事箱中に突入したら、猫がどや顔を決めてくれる。難易度もさほど高くないので、猫たちは面白いように箱に命中する。失敗した時のあちゃ~顔も可愛いので、箱に入っても入らなくても楽しい。
そう、これは得点や技量を競うアプリではない。かつての「こちょねこ」と同じく、猫と戯れて癒やされることを目的とした、猫好きに特化したアプリなのだ。
こういうアプリをやっていると「猫はどうして可愛いのだろう?」という、根源的な問題にたどり着く。
やっぱり、猫の可愛さは性格より見た目にあるのではないだろうか?
特に仕草が可愛い。身体が柔らかいので、犬には絶対取れないポーズを披露してくれる。痴態としか見えないアホなポーズに「おバカさんね」と独りごちする幸福は、猫好きの方なら経験したことがあるだろう。
そりゃあ、性格の良い猫もいる。しかし性格で勝負したら、とても犬には敵わない。頭の出来が違うから。
そもそも猫は、して欲しいことは決してやらず、して欲しくないことは絶対にやる生き物だ。呼べば来ないし呼ばないと来る、気分次第で舐めたり噛んだり引っ掻いたり。
結局、猫と暮らすというのは、常に期待と希望を裏切られ続けることなのだ。それでも猫が好きな私達って、ドMなんです、きっと。
山口恵以子(やまぐち・えいこ)●作家。近著に『夜の塩』(徳間書店)。
『クロワッサン』996号より
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