一本の皺に絶望してはいけない――編集部
文・澁川祐子
一本の皺に絶望してはいけない――編集部
大人のファッションを考える「ファッション 女の一生」と題するフランス『ELLE』誌との提携記事。そこには編集部による、年齢を重ねることから生まれる美しさへの賛歌が高らかに綴られています。
その一節に登場するのが、このドキッとする簡潔なひと言。直前には、次のように記されています。
<ファッションも、文化の所産の一部だとするなら、
そこには成熟というものが必要だ。無我夢中で身にまとうのではなく、
愛するすべを知ることが必要だ。そのようなわざは、
時間とともにはぐくまれる。>
ファッションというと、若い女性たちのものと思われがち。けれど、若さとはどこかしら未熟さを残していることであり、まだ自分というものがよくわかっていないということ。歳を重ね、成熟することで、自分を受けいれ、その人なりの着こなしに辿りつくのだと語りかけます。
この記事が掲載された1978年といえば、竹の子族が登場する一方で、神戸からはお嬢様ファッション「ニュートラ」、それに対して横浜発の女子大生ファッション「ハマトラ」が流行した年。次々と新しいブームが生まれ、世間をにぎわせていた時代です。
でもそれは、あくまで若い人が中心の話。今でこそ40代、50代の女性に向けたファッション情報は珍しくありませんが、当時、そうした話題は少なかったのでしょう。文章のキレ味のよさに、大人の女性ならではの魅力を提示したいという、編集部の強い意気込みが伝わってきます。
※肩書きは雑誌掲載時のものです。
澁川祐子(しぶかわゆうこ)●食や工芸を中心に執筆、編集。著書に『オムライスの秘密 メロンパンの謎』(新潮文庫)、編著に『スリップウェア』(誠文堂新光社)など。
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