情熱的に、エレガントに、鍛え抜かれた身体から生まれる超絶テクニック。カスタネットを叩きながら、ジャンプをしながら、微塵のズレもない正確なリズムで繰り出されるステップ……。あまりの凄さに鳥肌が立つ。ここで繰り広げられるスペインの伝統の舞に、古さは全く感じない。あるのは新鮮な感動だけだ。
今年10月に来日公演を控えたスペイン国立バレエ団は創立40周年を迎える。みなさん、アントニオ・ガデスを覚えていらっしゃるだろうか。1983年にスペインで制作され世界的ヒットを飛ばした映画『カルメン』で主役を務め、ヒロインとの激しいフラメンコレッスンで老若男女を魅了し、大フラメンコブームを巻き起こした彼が、この舞踊団の初代監督だった。その後、紆余曲折の40年を経て、伝統と革新の調和を追求して止まなかったガデスの精神を受け継いだ若き鬼才、アントニオ・ナハーロ監督と共に、今やスペイン舞踊の最高峰の名を欲しいままにする。フラメンコに代表されるスペイン舞踊には、他にスペイン各地の民族舞踊、クラシックバレエの影響を受けた「ボレーラ」、ファリャやグラナドスなどのスペイン音楽を踊る「クラシコ」などがあるが、40周年記念公演でも、そのすべてを網羅したプログラムで挑む。