くらし

『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』著者、花田菜々子さんインタビュー。「必要とする人に本の魅力を伝えたい。」

はなだ・ななこ●1979年、東京生まれ。本とサブカル好きが高じて書籍と雑貨の店『ヴィレッジヴァンガード』に12年務めた後、大型複合書店社員、街の小さな本屋の店長を経て、現在は『HMV& BOOKS HIBIYA&COTTAGE』の店長を務める。

撮影・谷 尚樹

ウェブマガジンサイトでの連載が拡散され、ネット上でたちまち話題に。書籍化されると、これまたすぐさま重版となった。

「本が出たこと自体、びっくり」

と花田菜々子さん。

「多くの人から、最初はサイトで会った70人それぞれの話で進んでいくのかと思ったら、予想外の展開でしたという感想が」

そう、この本は仕事に情熱を失いかけ、結婚生活も崩壊寸前という、とある書店の店長がタイトルどおりに人と会いまくって本をすすめまくって、気づけば自立の道に繋がっていったという自己啓発本だ。

知らない人と30分だけ話をする出会い系サイトにアップしたプロフィールは、《変わった本屋の店長をしています。1万冊を超える膨大な記憶データの中から、今のあなたにぴったりな本を1冊選んでおすすめさせていただきます》。

「よく怖くなかったですか?と聞かれるんですけど、知らない人と会って喋ることはわりと好きなんです。大勢集まって盛り上がるより2人で話すほうが、相手の人の気持ちを引っ張り出せるような気がするので。本当にその人に合った本をすすめられるのか?と、そっちのほうが怖かったです」

管理のきいたサイトでの出会いは概ね良好で、“修業”を重ねていったが、時には性的欲求が絡む不快な出来事もあった。それもまた、ある意味では“修業”。自分の中での方位磁石のような存在、当時の京都『ガケ書房』店主・山下賢二さんに会いに行くくだりでその修業はひとまず一段落を遂げる。

「独身と結婚しているのとどちらがいいのかとか、子どもを産まないと言い切ってしまっていいのかとか、ずっと答えが出なかったんですけど、山下さんにお会いして“そもそも人生で重要なことに結婚とか子どもは関係なかったんだ”という答えを自分の中に発見しました。もうこの服捨ててよかったんだね、と楽になる感じ」

残ったのは、本が好きという気持ち。その本の魅力を誰かに伝えたいという思い。

「それも万人にすすめるのではなく、必要としている人や面白いと思ってくれそうな人に伝えたいという気持ちがあります。本を読んでその人が元気になることに自分が加勢できたと感じられるのが、ひとつの喜びですね」

自分のやりたいこと、好きなことはすべて本に繋がっていく。

「本とか本屋にしがみつきたくないなと思うので、ちょっと悔しいんですけれど」

いや、それこそが“天職”というものでしょう。

河出書房新社 1,300円

『クロワッサン』978号より

この記事が気に入ったらいいね!&フォローしよう

この記事が気に入ったらいいね!&フォローしよう

SHARE