イイノナホさんのチャレンジ精神、独創性とハンドメイドの温もりはおやつにも。
撮影・青木和義 文・一澤ひらり
思いつきでなんでものせちゃう、具だくさんのトッピングいなり寿司。
常に創意工夫を楽しむ。これぞアーティスト魂! この日のおやつのテーブルに登場したトッピングいなり寿司もそんな逸品だ。
「今日のおいなりさんは豚ひき肉の高菜炒めとか、おかずをのっけ盛りにしているんです。具だくさんなので1つ食べれば栄養も満点で、エネルギーをチャージできますからね」
とイイノさん。あえて酢飯にはせず、普通のごはんに食感のいいたくあんや炒めたにんじん、ごまなどを混ぜ合わせ、甘辛く煮た油揚げの中に詰めて、その上におかず系の具材をトッピングした。
「炒り卵とか青菜のお浸しとか、思いつきでなんでもトッピングしちゃいますね。私が作るのは気分次第ですから、そこを楽しんでいるんです」
お祝いのデコレーションケーキやパンケーキも手作り。
ところで、おやつの中でも別格の存在といえばデコレーションケーキ。お祝い事など特別な日に主役を務めるおやつの王様だ。イイノ家ではクリスマスやバースデーにみんなで食べるケーキもお手製だ。
「去年のクリスマスケーキはバラのデコレーションをどうしてもしたくて、ショートケーキにしたんです。スポンジケーキをまず焼くんですけど、2等分してその間にクリームを塗るともっさりしてしまうんですよね。それで4等分してクリームを塗ってイチゴを挟んだら、お店屋さんみたいにきれいなケーキになって感激しました」
とうれしそうに話す。
イイノ家定番のおやつ、パンケーキもさらなる進化を遂げている。
「パンケーキってホットケーキミックスがないと作れないって思っていましたけど、最近は使わなくなりました。卵と小麦粉、砂糖と塩とアルミフリーのべーキングパウダーがあれば手軽に作れるんです。ちっちゃくて薄いのをたくさん作って、みんなでワイワイ言いながら食べるのが楽しいんですよ」
おやつ作りは現実逃避? 子どものようなひとときを過ごせるのがおやつの時間。
ガラス作品の制作に勝るとも劣らない労力と時間をおやつ作りに費やすイイノさん。その情熱は一体どこから?
「実は現実逃避が大きいんですよね。ガラス制作のプレッシャーが大きくなると、料理やお菓子作りに没頭してしまうところがあるんです。今日中に作品を仕上げなきゃいけないのに、なんで私は朝からきんぴらごぼうを作ってるの? しかも、どれだけごぼうを細く切れるかなんてこだわって(笑)」
自然に顔がほころんで、大人も子どものように無心なひとときを過ごせるのがおやつの時間。イイノさんは作品集『ガラスとヒカリ』の中で、願うとしたら自分も世界中のみんなも「ヒカリのさす明るいところで笑っていられますように」と書いている。そのひそやかな祈りは、毎日のおやつにも込められているようだ。
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