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糖質イコール悪は間違いです――上手に摂って筋肉を育てよう

健康のために……と糖質オフを心がけている人も多いかも。でも、筋肉のためには実は賢く摂ったほうが効率的なのです。東京都栄養士会会長の西村一弘さんに糖質の大切さについて聞きました。

イラストレーション・山里美紀子 文・保手濱奈美

糖質イコール悪は間違いです――上手に摂って筋肉を育てよう

昨今の糖質オフブームもあり、糖質は極力摂らないほうがいいものだと思っている人も多いのではないだろうか。

「糖質は、体や脳を動かすために必要なエネルギー源。たんぱく質、脂質とともに三大栄養素と呼ばれる炭水化物の大半を占めています。それほど重要なものなので、極端な糖質制限はむしろ健康の妨げに。実は、筋肉をつけるという観点からも、適度な糖質の摂取は欠かせません」と、東京都栄養士会会長の西村一弘さん。

糖質といえば、炭水化物と混同しがちだが、その違いを知ることも糖質を上手に摂取するうえでのカギとなる。

「炭水化物は、糖質と食物繊維を合わせた総称です。食物繊維には、腸内環境を整える働きがあります。糖質を通常の砂糖を中心に摂取すると血糖値が急に上がりますが、ゆっくり吸収する糖であるパラチノース(てんさい糖から作る天然の糖)や食物繊維はそれを抑える働きも持ち合わせています。そのため質を選んで、炭水化物全体として糖質を摂取するよう心がけましょう」

また、筋肉をつけようとたんぱく質を摂って運動をしても、糖質が不足していると逆効果になってしまうという。

「体がエネルギーとして使う順番は、糖質、脂質、たんぱく質です。運動をすると糖質が最初に燃やされ、次が脂肪の出番となります。それでも足りないとたんぱく質が使われますが、そもそも糖質が不足していると、たんぱく質が早々にエネルギーに変換されてしまう。筋肉をつけるための努力が、反対に筋肉を壊すことにつながってしまうのです」

では、食事から三大栄養素を摂取する際に、糖質を含む炭水化物はどれくらいの比率を確保するといいのだろう。

「三大栄養素の頭文字を取って『PFCバランス』といいますが、炭水化物は60%ほどが理想的。脂質は25%、たんぱく質は15%程度と意識しましょう」

糖質イコール悪は間違いです――上手に摂って筋肉を育てよう

理想のPFCバランスとは?
PFCとは、食事で摂るたんぱく質(Protein)、脂質(Fat)、炭水化物(Carbohydrate)の理想的なエネルギー摂取比率のこと。たんぱく質の摂取に気を取られがちだが、糖質はその4倍も必要ということになる。

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糖質と炭水化物、どう違う?
炭水化物は、糖質と食物繊維が合わさったもの。糖質は体内に吸収されてエネルギーとなり、食物繊維は一部を除いて吸収されず、腸内環境の調整を行う。食物繊維には、血糖値のほか、コレステロール値の上昇抑制の働きも。

糖質が欠乏すると、体と筋肉にこんな影響が

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血液が酸性に傾きやすくなる
糖類には、単糖類(ブドウ糖、果糖など)、二糖類(砂糖など)、多糖類(でんぷんなど)等の種類がある。「不足すると、肝臓で脂肪が分解されて、糖の代わりにケトン体というエネルギー源を生成。増えすぎると血液が酸性に傾きます。これにより、頭がぼんやりしたり、吐き気や意識障害を引き起こしたりと、命に関わる危険な状態になってしまうのです」

糖質イコール悪は間違いです――上手に摂って筋肉を育てよう

悪玉菌が優位になり、腸内環境が悪化する
炭水化物が不足すると、善玉菌、悪玉菌など腸内に生息する細菌のうち、悪玉菌が優位になる。「それにより腸内に有害物質が発生し、腸内環境が悪化。便秘や下痢を引き起こします。また、悪玉菌の繁殖により、腸内でガスが発生。おならが出やすくなるのはもちろん、ガスは体内に浸透するため、それが皮膚を通して発散され、体臭も臭くなります」

筋肉が効率的に生成されない
糖質が体や脳を動かすエネルギー源だということは、先述のとおり。「体内で優先的にエネルギーとして使われるのが糖質です。そのため糖質の摂取が不足すると、脂質、さらにはたんぱく質がエネルギーに変換され、結果的に筋肉づくりに必要なたんぱく質が足りなくなってしまいます。筋肉の効率的な生成には、糖質を確保することが不可欠です」

40代以降、特に糖質をしっかり摂りたい理由

糖質イコール悪は間違いです――上手に摂って筋肉を育てよう

70歳時点での筋力底上げのため
筋肉量は70歳前後で大幅に減少。「しかし、糖質オフブームの影響もあり、40~60代時点で、すでに筋肉量が不足している人が近年増えています。70歳以降の筋肉量を決定づけるのは、まさにこの年代。いまやるべきは糖質オフではなく、糖質を摂って筋肉量のピークを上げておくこと。老後に筋肉量が減っても問題ないように、備えておきましょう」

糖質イコール悪は間違いです――上手に摂って筋肉を育てよう

脂質でエネルギーを摂ることのリスクが大きいため
実は脂質は、糖質以上に効率のいいエネルギー源なのだという。「糖質とたんぱく質は1gあたり約4kcaLのエネルギーを生み出すのに対して、脂質は約9kcaLと2倍以上。しかし、40代以上の場合は特に、脂質を摂りすぎることによるコレステロール値の上昇や、動脈硬化が心配に。その意味でも、エネルギー源は糖質で確保することが賢明です」

脳へのエネルギー不足による認知症を予防するため
糖質のなかでも、脳のエネルギー源となるのはブドウ糖。「そのためブドウ糖が不足すると、思考力の低下を招きます。そして、不足した状態を繰り返すと、脳細胞が減少して、認知能力の低下や認知症のリスクを高めることに。認知症のリスクは、60歳後半から急激に増えていきます。予防のためにも、適度な糖質の摂取は必須です」

  • 西村一弘 さん (にしむら・かずひろ)

    東京都栄養士会会長

    駒沢女子大学人間健康学部健康栄養学科教授。糖尿病の栄養療法の第一人者。糖質の吸収速度を穏やかにする「スローカロリー」を提唱。DM三井製糖との協業も行う。

『クロワッサン』1157号より

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