一度観たら夢中になる! 新しい趣味にしたい宝塚歌劇の“日本物”芝居作品の魅力
文・小松深雪
“推し活”を生活の一部として楽しむ人々が増えている中、新しい趣味や夢中になれるものを探しているという人も多いはず。日常を忘れ、心躍る非日常感を味わいたい方こそ、「宝塚歌劇」という世界をのぞいてみませんか? 最近では女性のみならず、男性ファンも増えている宝塚歌劇。その多彩な魅力をギュッとお伝えします。
「宝塚歌劇」と聞いて、多くの人がまず思い浮かべるのは『ベルサイユのばら』などの西洋を舞台にした作品かもしれませんが、実際は非常にバラエティに富んだ作品が上演されています。中でも日本の歴史を題材にした“日本物”と呼ばれる作品は、長年にわたり愛されてきた、宝塚歌劇に欠かせないジャンルのひとつです。その表現方法も、ミュージカル、オペレッタ、ショー、レビューなど多岐にわたります。
日本物のお芝居は、「なんだか難しそう」「知識がないと楽しめないのでは……」と思われがちですが、初心者でも身構えずに楽しめるところが、エンターテインメント性の高い宝塚歌劇の大きな魅力。壮大な歴史と人間ドラマを、より親しみやすく、わかりやすく、そしてドラマティックに描いてくれます。
まもなく開幕の日本物作品に注目! 平家の栄華と没落を描く愛と別れの終末譚
2026年2月に宝塚大劇場で幕を開ける、花組公演『蒼月抄(そうげつしょう)』 -平家終焉の契り-は、平家最後の総大将・平知盛を主人公とした物語です。日本の歴史の中でも激動の時代のひとつ、平安時代末期。父・平清盛の寵愛を受けた知盛を中心に、平家一門の盛者必衰の運命が、観客の目の前でドラマティックに展開される作品。その壮麗な世界観がビジュアルからも伝わってきます。
宝塚歌劇の日本物作品は、テーマや人物設定によりその雰囲気や印象はさまざまです。平安時代に限らず、幅広い時代が舞台となり、それぞれの時代ならではの文化や価値観が描かれてきました。史実をベースにフィクションを交えたオリジナルストーリーや登場人物の人間ドラマはもちろん、その時代の文化を映す衣装や舞台美術などにも注目したいところ。それでは、近年上演された日本物の芝居作品をピックアップしながら、時代ごとにたどっていきましょう。
宝塚歌劇の“日本物”ならでは! 作品の魅力を時代ごとに紹介
〈平安時代〉
貴族が政治・文化の中心を担い、宮廷社会が洗練された時代。情緒や美意識を重んじるようになり、日本独自の文化が大きく花開きました。特に、かな文字の発達によって、和歌や物語、日記といった文学が盛んになり、貴族の日常や繊細な心情が豊かに表現されるようになりました。
宝塚歌劇の舞台では、華やかな宮廷文化を背景に、貴族同士の恋模様やすれ違いがロマンティックに描かれます。天皇や摂関家をめぐる思惑や政治的駆け引きが、物語に奥行きを与えることも。
田辺聖子氏の長編小説を舞台化した花組公演『新源氏物語』(2015)では、光源氏が女性たちとの恋を通して成長と喪失を重ねていく姿が、情感豊かに表現されました。また、束帯や十二単など色彩豊かで華やかな衣装が舞台を彩り、豪華絢爛な世界観の中で、雅やかな宮廷文化の魅力を存分に味わえます。
ほかにもこんな作品を上演!―平安時代―
・月組公演『応天の門』-若き日の菅原道真の事-(2023)
・月組全国ツアー公演『花の業平』~忍ぶの乱れ~(2025)
〈南北朝時代〉
鎌倉幕府滅亡後も武士が政治の主導権を握り続ける中で、天皇権力と武家政権が激しく対立した時代。朝廷が南朝と北朝に分裂すると、政治的混乱と武力抗争が長期化しました。度重なる内乱や飢饉などの影響で社会不安は深まり、無常観の色濃く漂う時代でした。
月組公演『桜嵐記』(2021)は、混迷を極める南北朝時代の勢力図をわかりやすく演出しながら、主人公である南朝の忠臣・楠木正行の気高い生き様を浮き彫りにしました。桜の舞い散る吉野山を舞台に描かれるのは、後村上天皇の侍女・弁内侍とのつかの間の恋。南朝とともに滅びゆく宿命を知りながらも、戦いの中で命を燃やし尽くす主人公の姿が、観客に鮮烈な印象と感動を与えました。
〈江戸時代〉
長く続いた戦乱の世が終わり、徳川幕府のもと長く泰平が築かれた時代。身分制度が固定化され、人々はそれぞれの立場の中で生活を営みました。都市を中心に経済活動が活発となり、商人たちを中心に町人文化が発展していきます。また鎖国下で日本独自の感性が研ぎ澄まされ、浮世絵や歌舞伎などさまざまな文化や学問が成熟していきました。
そんな江戸時代を舞台にした作品は、宝塚歌劇でもバラエティに富んでいます。歴史上の人物を題材にした重厚な作品から、殺陣が見どころのアクション活劇、町人たちを中心としたコミカルな喜劇まで、多くの作品が生み出されました。
中でも、1939年のオペレッタ映画を舞台化した花組公演『鴛鴦歌合戦』(2023)は注目を集めました。長屋住まいの貧乏浪人と隣人の娘の恋模様が、骨董好きの殿様を巻き込んだ大騒動へと発展。個性豊かで魅力的なキャラクターたちの掛け合いが楽しい、にぎやかでユーモラスな作品です。舞台一面に色とりどりの和傘が広がり、鮮やかで粋な和装に身を包んだ出演者たちが歌い踊るプロローグは、観客を作品の世界に一気に引き込みます。
ほかにもこんな作品を上演!―江戸時代―
・花組公演『MESSIAH(メサイア) −異聞・天草四郎−』(2018)
・月組公演『夢現無双 -吉川英治原作「宮本武蔵」より-』(2019)
・月組博多座公演『川霧の橋』-山本周五郎作「柳橋物語」「ひとでなし」より-(2021)
〈幕末~明治時代〉
黒船来航を機に江戸幕府の権威は揺らぎ、尊王攘夷の嵐が吹き荒れた幕末の動乱期。徳川の世を終わらせようとする志士たちと、伝統秩序を守ろうとする幕府勢力が激しく衝突し、各地で熾烈な武力抗争が繰り広げられました。やがて明治維新によって旧体制は崩れ、社会は近代化へと進みますが、その急激な変化は人々に大きな戸惑いももたらしました。
こうした幕末を舞台にした作品は、宝塚歌劇でも高い人気を誇り、数多く上演されています。和装から洋装へと移り変わる時代の境目で、新選組のだんだら羽織や鹿鳴館のドレスなど印象的な衣装も登場。とりわけ明治期のクラシカルな洋装は、宝塚歌劇ならではの洗練された衣装の美しさを存分に堪能できます。
星組公演『桜華に舞え』-SAMURAI The FINAL-(2016)は、明治維新の立役者のひとり・薩摩藩の桐野利秋を主人公とした物語です。敬愛する西郷隆盛とともに西南戦争へと身を投じていく姿を、戦いの中で出会った会津藩の武家娘との恋や、同郷の藩士たちとの友情を交えながら描いていきます。義に厚く信念を貫いた「最後の侍」の生き様が、胸を打つ作品です。
ほかにもこんな作品を上演! ―幕末〜明治時代―
・雪組全国ツアー『誠の群像』—新選組流亡記—(2018)
・雪組公演『壬生義士伝』~原作 浅田次郎「壬生義士伝」(文春文庫刊)~(2019)
上記で紹介した時代以外にも、飛鳥時代を舞台にした万葉ロマンの名作・花組博多座公演『あかねさす紫の花』(2018)や、戦国の世を駆け抜けた武将の生き様を鮮烈に描いた宙組公演『美しき生涯』-石田三成 永遠(とわ)の愛と義-(2011)、月組公演『NOBUNAGA<信長> -下天の夢-』(2016)など、宝塚歌劇には観客を魅了してきた日本物作品が数多くあります。
歴史劇は難解に思えるかもしれませんが、宝塚歌劇ではトップスターが演じる主人公を軸に物語が展開されるため、人間関係やストーリーの流れがわかりやすいのが特長です。和服の着こなしや美しい所作も心躍るポイントで、女性が男性を演じることで生み出される色気は「長年の鍛錬により研ぎ澄まされた芸」の凄みを感じさせます。さらに、オーケストラの生演奏(宝塚大劇場・東京宝塚劇場のみ)がもたらす舞台の迫力は、作品の臨場感を一層引き立てます。
なじみある日本の歴史をきっかけに宝塚歌劇の世界に飛び込んでみようか迷っている方も、宝塚歌劇を観たことはあるけれど日本物は難しそうと尻込みしている方も、ぜひ一度その世界に触れ、想像を超える華やかさとエンターテインメントの醍醐味を心ゆくまで味わってみてください。
いま注目したい作品——情感豊かな日本物のお芝居と、情熱的なラテンショーの豪華2本立て!
花組公演『蒼月抄(そうげつしょう)』-平家終焉の契り-
『EL DESEO(エル・デセーオ)』
宝塚歌劇の公演は「お芝居」と「ショー」の2本立てで構成されることが多く、後半のショーでは、お芝居の物語世界とは一転して、躍動感あふれるステージが展開されます。ラインダンスや象徴的な大階段など、宝塚歌劇ならではの魅力を一度の観劇で味わえます。
本記事のはじめに紹介した花組公演『蒼月抄』は、栄華を極めたものが滅びゆく、一族の悲しい運命が凝縮された芝居作品です。お芝居に没入したあとは、幕間休憩をはさんで、ショー『EL DESEO』が上演されます。「欲望」を意味するタイトルの、妖しくもエネルギーに満ちたラテンショーも、あわせてお楽しみください。
公演スケジュールはここでチェック!
宝塚大劇場公演
【公演期間】 2026年2月14日(土)~3月29日(日)
【一般前売】 2026年1月24日(土)~
東京宝塚劇場公演
【公演期間】 2026年4月18日(土)~5月31日(日)
【一般前売】 2026年3月22日(日)~
兵庫や東京の劇場まで足を運ぶのが難しいという方もご安心を。
宝塚歌劇は、全国各地の映画館やご自宅でもお楽しみいただけます!