暮らしに役立つ、知恵がある。

 

広告

花あしらい、打ち水、丁寧な掃除。二百年続く旅館の美意識に学ぶ

数多くの要人・文人に愛され続ける京都の旅館『柊家』。時を経ても変わらないあたたかなもてなしと、進化し続ける老舗の在り方とは。

撮影・福森クニヒロ 文・大和まこ

女将の仕事は花を生けることから学ぶことも多い。玄関の迎え花から部屋に彩りを添える花まで、空間の移り変わりの流れに沿って人をなごます花生けを心がけるという
女将の仕事は花を生けることから学ぶことも多い。玄関の迎え花から部屋に彩りを添える花まで、空間の移り変わりの流れに沿って人をなごます花生けを心がけるという
花あしらい、打ち水、丁寧な掃除。二百年続く旅館の美意識に学ぶ
花あしらい、打ち水、丁寧な掃除。二百年続く旅館の美意識に学ぶ
女将の仕事は花を生けることから学ぶことも多い。玄関の迎え花から部屋に彩りを添える花まで、空間の移り変わりの流れに沿って人をなごます花生けを心がけるという
花あしらい、打ち水、丁寧な掃除。二百年続く旅館の美意識に学ぶ
花あしらい、打ち水、丁寧な掃除。二百年続く旅館の美意識に学ぶ

香りたかい高野槙の風呂を宿泊客の到着に合わせて

小川三知(おがわ・さんち)によるステンドグラスがあしらわれた浴室のほか、壁と天井、木材を使ったタイルを配した床に漆塗りを施した浴室、2つの貸切風呂がある
小川三知(おがわ・さんち)によるステンドグラスがあしらわれた浴室のほか、壁と天井、木材を使ったタイルを配した床に漆塗りを施した浴室、2つの貸切風呂がある

『私の家内なども柊家の清潔な槇の木目の湯船をよくなつかしがる。』川端康成

空間との調和を大切にさりげなく控えめに

丁寧に手入れされ自然を感じる庭は、目を向ければ常に安らぎをもたらしてくれる。その有り様は『柊家』のもてなしに通じる
丁寧に手入れされ自然を感じる庭は、目を向ければ常に安らぎをもたらしてくれる。その有り様は『柊家』のもてなしに通じる

京都に受け継がれる老舗の心意気ともてなしを見る

それらすべてを支えるのは人である。西村さんは振り返る。「店の思いを一番初めに一生懸命に話してくれたのは八重でした」。八重さんは昭和・平成と『柊家』に60年客室係として勤め、国内外の賓客をもてなしてきた。「自分がお客様に対してしてきたこと、なぜ宿が評価されているのかを教えてくれました。言われる前に気づき、お客様に気遣いさせないということも」。今も『柊家』にとって客室係はもてなしの最前線にいる大切な存在。「ご到着からご出発まで、滞在中のお客様に関わる全てのことに親身になって対応します」。客室係となって25年のはなこさんは言う。「目配り、気配り、心配りというのが一番好きな言葉です」。宿泊客が帰った後の掃除は次の客人のために1時間ほどかけて念入りに。人の心に寄り添うのは、やはり人なのだ。

変わらず受け継がれる部分もあれば、変化を厭わないことも老舗が老舗たるゆえん。『柊家』も2006年に新館を作りあげ、次代へと受け継ぐ姿を見せている。「革新の積み重ねが京都の伝統を作りあげてきました。祖父がカーテンや照明を手元で操作できるリモコンをいち早く取り入れたように。自分たちがいる時代は先人から繋がっているからこそ成り立つということを、京都では折に触れ意識します。より良い未来への責任感がこの街に根付いています。もてなしの気持ちは変わらないけれど、時代に合わせて形を変えつつも、この先へと繋げていければ」。大女将の言葉の奥には、時代を変えてもなお受け継がれる、もてなしの形が見えた。

3段階の掃除、打ち水。もてなしは見えないところから始まる

玄関脇には手水桶と柄杓。宿泊客を迎える前には打ち水をし、場を清める。同時に暑い夏には涼を取る、土埃を抑えるなどの実用の意味もある
玄関脇には手水桶と柄杓。宿泊客を迎える前には打ち水をし、場を清める。同時に暑い夏には涼を取る、土埃を抑えるなどの実用の意味もある
はたきは素材の異なる3種類を使い分ける。畳は水で濡らした紙を撒いて箒で掃き、濡れ雑巾で拭き、最後は乾いた布で拭きあげる
はたきは素材の異なる3種類を使い分ける。畳は水で濡らした紙を撒いて箒で掃き、濡れ雑巾で拭き、最後は乾いた布で拭きあげる
花あしらい、打ち水、丁寧な掃除。二百年続く旅館の美意識に学ぶ
花あしらい、打ち水、丁寧な掃除。二百年続く旅館の美意識に学ぶ
玄関脇には手水桶と柄杓。宿泊客を迎える前には打ち水をし、場を清める。同時に暑い夏には涼を取る、土埃を抑えるなどの実用の意味もある
はたきは素材の異なる3種類を使い分ける。畳は水で濡らした紙を撒いて箒で掃き、濡れ雑巾で拭き、最後は乾いた布で拭きあげる
花あしらい、打ち水、丁寧な掃除。二百年続く旅館の美意識に学ぶ
花あしらい、打ち水、丁寧な掃除。二百年続く旅館の美意識に学ぶ

新しい風への感性こそが、京都の歴史

四代目が昭和39年に考案したという、カーテンの開閉や照明の操作が手もとでできるリモコン。瓢箪の形に心なごむ
四代目が昭和39年に考案したという、カーテンの開閉や照明の操作が手もとでできるリモコン。瓢箪の形に心なごむ
ライブラリーでは、「お客様と歴史、文化、美術とのご縁を繋ぎたい」と、松久院截金(まつひさいんきりがね)など伝統美を伝える展示も
ライブラリーでは、「お客様と歴史、文化、美術とのご縁を繋ぎたい」と、松久院截金(まつひさいんきりがね)など伝統美を伝える展示も
ガラス張りの広間は、宿泊客だけでなく、旅館を体感してもらう際などの空間としても利用している
ガラス張りの広間は、宿泊客だけでなく、旅館を体感してもらう際などの空間としても利用している
四代目が昭和39年に考案したという、カーテンの開閉や照明の操作が手もとでできるリモコン。瓢箪の形に心なごむ
ライブラリーでは、「お客様と歴史、文化、美術とのご縁を繋ぎたい」と、松久院截金(まつひさいんきりがね)など伝統美を伝える展示も
ガラス張りの広間は、宿泊客だけでなく、旅館を体感してもらう際などの空間としても利用している
京都市中京区麩屋町姉小路上ル TEL:075-221-1136 1泊1名7万3000円〜31万4000円(2名1室利用時、2食付き。サービス料込み、税別)。JR「京都」駅よりタクシーで約15分、地下鉄「烏丸御池」駅より徒歩10分

『クロワッサン』1150号より

02 / 02

広告

  1. HOME
  2. くらし
  3. 花あしらい、打ち水、丁寧な掃除。二百年続く旅館の美意識に学ぶ

人気ランキング

  • 最 新
  • 週 間
  • 月 間

注目の記事

編集部のイチオシ!

オススメの連載