【伝統的工芸品産業振興協会】受け継がれた日本の技術を現代に。工夫のある伝統的工芸品
撮影・太田太朗 文・梅原加奈
年に1度、魅力的な工芸品が東京に集う「ジャパン トラディショナル クラフツ ウィーク」が今年も開催。手仕事を愛するブランディングディレクターの福田春美さんに、数ある出品作の中からおすすめ品を厳選してもらいました。
セレクトしたのは…
福田晴美さん(ブランディングディレクター)
ホテル、ショップ、プロダクトなどのブランディングを手がける。趣味は料理と旅。器や家具などにも精通。
「“伝統的工芸品”と銘打たれると敷居高く感じられるかもしれませんが、最近は若い作り手も増え、今の暮らしに馴染むアイテムもたくさんあります。自分がどんなシーンで使うか想像しつつ、まずはひとつ手に取ってみて」(福田さん)
JAPAN TRADITIONAL CRAFTS WEEK 2025
10月17日(金)~ 30日(木)
日本各地の伝統的工芸品が東京都内(銀座、中目黒、代々木上原、青山・渋谷など)のライフスタイルショップ30店舗に集い、「創り手」「売り手」「使い手」をつなぐ、年に1度の応援イベント。各店舗により独自の視点で選ばれたアイテムが展示・販売される。期間中は、製作実演やワークショップなども開催予定。
A 薩摩焼【鹿児島県】
足つきカップ しのぎ粉引き
薩摩焼には多くの窯元があるが、そのひとつが、鹿児島県日置市吹上町にある「七然窯」。地元の土や素材を使って生み出される粉引きの器は、白地にやわらかなピンクが滲み、アンティークのような風合い。「高台つきの器はやはり特別感が漂う。和にも洋にもなじむうえ、お花を活けるなどの使い方もおすすめ」。直径8×H10cm 3,300円。
◆ 青山『プレインピープル 青山』にて取り扱い。
B 波佐見焼【長崎県】
ギア マグカップ&お皿ミニ
波佐見焼の窯元「大新窯」。着色した釉薬をチューブの先から押し出す「一珍」という技法で絵柄を描くシリーズのほか、写真のような歯車状のギザギザがある「ギア」シリーズも代表作。「小皿はカップの蓋にもできる。色違いなど、シリーズで揃えても素敵」。マグカップ 直径8×W11×H7cm 2,400円、お皿ミニ 直径8×H1.5cm 800円。
◆ 青山『VA-VA CLOTHING & VARIETY』にて取り扱い。
C 壺屋焼【沖縄県】
七寸皿〈黒ゴス唐草〉
沖縄・読谷村にある壺屋焼窯元「陶眞窯」のやちむん。子孫繁栄を願う伝統的なモチーフである唐草模様を用いつつ、窯主の相馬正和さんらしい、現代の暮らしに寄り添うモダンな一枚に。「顔料の黒ゴスを使った深いグリーンと飴色が落ち着いた雰囲気。どんな料理にも合う使い勝手のいい七寸皿だと思います」。直径21×H4cm 4,500円。
◆ 代々木上原『IEGNIM』にて取り扱い。
D 信楽焼【滋賀県】
米炊き土鍋 三合 飴色
日本六古窯のひとつで、たぬきの置物でも有名な滋賀・甲賀市の信楽で作られる信楽焼。肉厚のためじんわりと熱が入り、ご飯をおいしく炊き上げるうえ、保温力も高い。「素朴な風合いや佇まいも愛らしく、炊き上がったらそのまま食卓へ。ご飯を炊くだけでなくシチューポットとしても使えそうです」。W23×H18cm 2.4kg 1万6500円。
◆ 中目黒『coverchord nakameguro』にて取り扱い。
左 名古屋節句飾【愛知県】
ARARE(左)、HINATA(右)
東海地方では江戸時代から節句飾の工芸技術が発展。100年以上の歴史を持つ「安藤商店」は名古屋節句飾のひとつ「雪洞(ぼんぼり)」の伝統技術を今に伝える。「ぼんぼりを現代風にアレンジしたテーブルランプ。美濃和紙越しの灯りはベッドサイドにぴったり」。ARARE・直径14×H15cm 2万8600円、HINATA・直径12×H14cm 2万8050円。
◆ 銀座『東京鳩居堂 銀座本店』にて取り扱い。
右 箱根寄木細工【神奈川県】
道具箱 composition 中・小
木の色を活かし、美しい幾何学模様を描く箱根寄木細工。小田原市板橋の「OTA MOKKO」では、新たな模様を生み出し、現代的なエッセンスを加える。「クリムトの絵を彷彿とさせるモダンな柄と色合い。リビング、ベッドルームなどあらゆる場に馴染みそう」。中・W170×D135×H95mm 1万8700円、小・W140×D100×H75mm 1万4740円。
◆ 銀座『GINZA HAKKO 木の香』にて取り扱い。
左 二風谷イタ【北海道】
二風谷イタ(角盆)
「イタ」とは、アイヌ文化に伝わる浅く平たい木製の盆のことで、とくに北海道・平取町二風谷エリアに伝わる「二風谷イタ」は伝統的工芸品に指定されているもの。「アイヌの伝統文様と二風谷イタ特有のラㇺラㇺノカ(鱗彫り)が彫られた盆は、緻密な美しさ。絵画のように飾っても素敵です」。W30×D30cm 5万2800円。
◆ 青山『玉川堂 笄 KOGAI』にて取り扱い。
右 江戸切子【東京都】
琥珀色クリスタルガラス
ロックグラス 市松模様(琥珀色緑)
江戸時代後期に東京で生まれた、ガラスの表面に模様を施す江戸切子の技術。「門脇硝子加工所」は、江戸切子をもっと身近に感じてほしいと日常使いできるビールグラスやロックグラスなどを提案。「ガラスの内側が琥珀色、外側の緑の被せガラスに伝統柄の市松模様が。角度によって変化する色味が美しい」。直径9×H8.6cm 2万9700円。
◆ 銀座『玉川堂 銀座店』にて取り扱い。
上のボックス 越前和紙【福井県】
harukami[cobble](グレー)、[moln](ホワイト、グリーン)
越前和紙の特徴は丈夫なこと。それを活かし「やなせ和紙」がプロダクトデザイナーの松山祥樹氏とともに作り上げた和紙の小箱〈harukami〉。「石で型取ったという有機的なフォルムが魅力的。部屋にさりげなく置きたくなる」。[cobble] W15.6×D12×H4.6cm 3,850円、[moln] W11.4×D9.4×H4.6cm 各3,300円。
◆ 九品仏『ECKEPUNKT kuhonbutsu』にて取り扱い。
下の紙 越中和紙【富山県】
型染めもみ紙
薬の包装紙用に丈夫な紙が漉かれるなど、室町時代から和紙づくりが盛んだった富山県・八尾町。写真の品は、伝統の手漉きを守る和紙工房「桂樹舎」が、イラストレーター奥村麻利子さんの図案を使い製作。「染料をしっかり馴染ませた鮮やかな発色に、グラフィカルな絵柄が美しい。現代的なのに懐かしさも持つ、手仕事の良さの漂う品」。約650×475mm 各6,600円。
◆ 中目黒『dessin』にて取り扱い。
会津本郷焼【福島県】
加彩輪花楕円鉢 大・小
13の窯元が点在する会津本郷焼。陶器と磁器の両方を製造し、作風もさまざまという珍しい産地だ。「樹ノ音工房」は2001年に独立した窯元。「お花モチーフではありますが甘すぎず、お菓子を盛るなどのほか、インテリアとしても活躍しそう」。大・W23×D19×H3.5cm 5,500円、小・W14.5×D13×H3cm 3,850円。
◆ 中目黒『BIN』にて取り扱い。
『クロワッサン』1151号より