「ヘビーメタルの帝王」が現代社会に鳴らす警鐘──「Crazy Train」(オジー・オズボーン)
高橋芳朗の暮らしのプレイリスト。「ヘビーメタルの帝王」として知られるイギリスのミュージシャン、オジー・オズボーンが7月22日に亡くなりました。今回は、ソロデビュー曲にして最大のヒットになった1980年の「Crazy Train」。ここでオジーは当時の東西冷戦に基づく核戦争の脅威を題材に、人間の愚かさと変化に向けての希望を歌っています。
文・高橋芳朗
「ヘビーメタルの帝王」として知られるイギリスのミュージシャン、オジー・オズボーンが7月22日に亡くなりました。76歳でした。彼は2020年にパーキンソン病に罹患したことを公表して近年は闘病生活を送っていましたが、7月5日に故郷バーミンガムで「最後のコンサート」と銘打った公演を開催。それから僅か2週間後の訃報でした。
オジーは1970年にブラック・サバスのボーカルとしてデビューしたのち、1980年にソロ活動を開始。常に悪魔の表象を纏い、やがて「暗黒の貴公子」の異名をとることになる彼は、ヘビーメタルのホラーなイメージを作り上げた張本人ですが、その破天荒な印象に反してキャリアの初期から社会的メッセージソングを歌い続けてきました。
ソロデビュー曲にして最大のヒットになった1980年の「Crazy Train」もそのうちのひとつ。ここでオジーは当時の東西冷戦に基づく核戦争の脅威を題材に、人間の愚かさと変化に向けての希望を歌っています。
「こんな狂った列車に乗るのはまっぴらだ。これが世界の有り様。大勢の人々が互いを敵とみなして生きている。だが、まだ遅くはないはずだ。愛を学び、憎しみを忘れることを」
大国や独裁者の横暴に、人類の運命が翻弄されている昨今。45年前に世界の行く末を制御不能の暴走列車に準えて警鐘を鳴らしたオジーの訴えは、今こそ有効なのではないでしょうか。
『クロワッサン』1150号より
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