『マザーアウトロウ』金原ひとみ 著──型破りな義母との本音トークが炸裂
文字から栄養。ライター・瀧井朝世さんの、よりすぐり読書日記。
文・瀧井朝世
さらっと読める薄い一冊だが、パンチは強烈である。物語の開始早々に爆笑した。
40歳の波那は、蹴人と結婚して3カ月。いつも実母の話となると蹴人が話を逸らすため、なにか事情があると思っていた波那だが、息子の結婚を知った義母のほうから声がかかり、ついに面会することに。で、洒落たカフェで待ち合わせたところ、現れたのは上下金色のスーツに金色の蝶ネクタイ姿、「今日はものまね教室だって言ったじゃない」と言う義母の張子さん。蹴人はそんな彼女をどう思われるか怖れていたようだが、波那は好感を持つ。
波那に「俺らマブになろうぜ！」と言った張子さんは、その後、美容整形や弾丸韓国旅行など、なにかと彼女を連れ回す。時には張子さんの友人を交え、彼女たちは互いの思いを語り合う仲に。会話の中身は年齢について、仕事の合理主義について、結婚式の有無や出産について等々、女性の人生に関わること。ポンポンと内容が変わっていくが、これがじつに示唆に富んでいて、はっとさせられたり共感したり。こんな強引で楽しくてパワフルな年上の女友達がいてくれたらいいな、と思わずにはいられない。
『クロワッサン』1150号より
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