『螺旋墜落』キャメロン・ウォード 著 吉野弘人 訳──機体墜落を阻止せよ! タイムループ・スリラー
文字から栄養。ライター・瀧井朝世さんの、よりすぐり読書日記。
文・瀧井朝世
最近、小説も映画もタイムループものが多い印象だが、これはかなり設定にひねりが効いている。
高校の数学教師、チャーリーはヒースロー空港からロサンゼルス行きの飛行機に搭乗。その便の副操縦士は仲違いしている息子のセオで、彼女は関係修復のためにあえてその便に乗ったのだ。深夜12時、機体は激しく揺れて急降下、なんと墜落する。が、チャーリーが目覚めると時計は夜の11時1分。彼女は夢を見たのかと思うが、12時になると同じパニックが起き、墜落。次に目覚めると時計は11時2分、次は11時3分、次は11時5分と、墜落までの時間が短くなっている。タイムループを把握したチャーリーは墜落を回避すべく、セオとの接触を試みるのだが……。
墜落までの時間がオウムガイ等の螺旋構造を表すフィボナッチ数列になっていると知った時、だから“螺旋”墜落なのかと痺れた。
チャーリーのパートの合間にセオ視点の過去パートが挿入されていく。それは墜落と関係があるのか。一人の乗客に過ぎないチャーリーに墜落を阻止することはできるのか。こんな話、よく思いつくなあ! という意味でも、震え上がるスリラーである。
『クロワッサン』1149号より
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