「自然の音や香り、宿の人との会話が五感全てを刺激」マーケティングライター・牛窪 恵さんの宿での過ごし方、譲れない条件
文・西村佳芳子
リモートワークが増えたことで、「五感は自ら体感しにいかないと磨けない」と思うに至ったという牛窪恵さん。
「川のせせらぎや木々の香りなど、自然由来のものを大切にしている宿がいいですね。都会でも、『ホテル椿山荘(ちんざんそう)東京』の庭園では、雲海や蛍との調和など、季節の趣に癒やされます」
地方では、歴史ある庭が美しい『湯田温泉 松田屋ホテル』、牧場のある『星野リゾート トマム』が、最近のお気に入り。「昔は『何もしない贅沢』が分からなかったけれど、今はよく分かります。お部屋から見える景色がきれいなら、それだけを堪能すべく朝からヨガをしてみたり。目を閉じると、風の匂いや鳥のさえずりが心地よく、五感も研ぎ澄まされていくようです」
明治維新の志士が集った誇り高き宿
湯田温泉 松田屋ホテル
伝統を守るってすごいなあとしみじみ
江戸初期の延宝3年(1675年)に創業した名旅館。ここには坂本龍馬や西郷隆盛など名だたる明治維新の志士が集ったという歴史が。館内随所に残る史跡も風情たっぷり。数寄屋風造りの本館は、各部屋から眺められる“廻遊式庭園”が魅力。「正統派の日本庭園を眺められる喜び。タイムスリップしたような感覚です」。アルカリ性の美肌の湯もまた魅力。
北海道の原風景を感じさせるホテル
星野リゾート トマム
レストランでミルクやチーズも!
「農業から生まれる美しい景観は旅する人に癒やしを与える」というコンセプトのもと、ゴルフ場だった場所を、酪農ファームを備えるリゾートに。気象条件がそろうと発生する雲海を間近で見られるテラスなど、北海道らしい景色を堪能できる。リゾート内にはホテルが2つあり、冬になれば29コースあるスキー場や氷の街「アイスヴィレッジ」も。
都会の庭園に込めたおもてなしの心
ホテル椿山荘東京
夏は涼やかな風鈴の小道も!
牛窪さんが定宿にする理由の一つに、庭の美しさがある。四季の風情が堪能できる庭園には、三重塔「圓通閣」(上写真)が。東広島「篁山(たかむらやま)竹林寺」から移設、今年で100周年になる国の登録有形文化財だ。雲海を作り出す新しい挑戦や、初夏には蛍も見逃せない。「広大な庭を生かした、都会のオアシスのような存在だと思います」
『クロワッサン』1148号より
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