縁起物に江戸切子、モダンな文具まで──時を超えて愛される江戸の雑貨
撮影・濱津和貴 スタイリング・伊東朋恵 文・梅原加奈
1. 『江戸趣味小玩具 浅草仲見世助六』の赤梟(あかふくろう)と多幸猫(たこねこ)
その数3,500種以上、小さくて愛らしい縁起物と出合う
浅草寺の仲見世に、慶応2(1866)年に創業した江戸趣味小玩具(豆おもちゃ)を扱う店。八代将軍吉宗の時代に贅沢で大きい玩具が御法度となり、小さいながら細工と工夫を凝らした豆おもちゃが流行したという。梟は「不苦労」に通じ、健康を願う赤色でさらに縁起よしなど、それぞれに意味がある。玩具の由縁を店の人に聞くのもまた楽しい。赤梟4,500円、多幸猫4,300円。
2. 『宇野刷毛ブラシ製作所』の千鳥ブラシ
江戸小紋などに使われる人気柄を、洒落感のある卓上ブラシに
創業は大正。刷毛づくりからはじまり、その技術を活かした高品質の刷毛やブラシを製造する。東京の伝統工芸の技術を広めるプロジェクト「東京手仕事」のひとつとしてデザイナー大野篤子さんとのコラボレーションで生まれたのが千鳥ブラシだ。デスクやキッチンなどどこでも尾羽でささっと掃いて。各1万3200円。千鳥は白、赤、黒の3色。写真は白馬毛のもの。黒馬毛もあり。
3. 『江戸鼈甲屋』の動物ピンブローチ
愛らしい動物モチーフに江戸の技が光る
江戸初期に誕生し、数多くの職人により帯留やかんざしなどにあしらわれ流行した江戸べっこう。こちらは7代にわたり、匠の技を伝承し続ける。歴史あるモチーフのほかに、洋装にも合うブローチやアクセサリーも展開。べっこうの表情豊かな動物モチーフを着こなしのアクセントに。茨布(ばらふ)ピンブローチ(左からトイプードル、うさぎ、フクロウ)各1万3200円。
4. 『日本橋さるや』の三番叟(さんばそう)
桐箱入りの爪楊枝は、特別な東京みやげにぴったり
宝永年間に創業し、300年続く楊枝専門店。身だしなみの道具として欠かせないものだった楊枝は、江戸中期には浅草寺の境内に専門店が100軒以上あったとも。こちらの楊枝は、古来より上等とされる黒文字のみを使用している。桐箱に描かれた目を引く猿の「三番叟」は能におけるめでたい門出の舞。15本入1,540円。
5. 『東京松屋』の江戸唐紙丸うちわと天神唐草箱
江戸の町を彩った、からかみをかわいい小物に
中国から伝来した模様のある紋唐紙(もんからかみ)をお手本に、平安時代から国産化した「からかみ」。大江戸八百八町の家屋の襖に貼られたことで、江戸生まれの「江戸からかみ」の技が発展。こちらの店では、江戸時代から昭和初期に生まれた数多くの文様を今に伝える。天神唐草箱(紫)6,600円、江戸唐紙丸うちわ(ひょうたん黒)2,530円。
6. 『日本橋 榛原(はいばら)』の榛原ノートとちいさい蛇腹便箋
西洋の人々も魅了した、幕末〜昭和初期のモダンなデザイン
文化3(1806)年に創業した和紙舗。江戸時代に豆州熱海産の雁皮紙を売り出し、一世を風靡。幕末から昭和初期にかけては木版摺りの榛原千代紙が幅広く愛用され、今もその柄は便箋やノートなどに受け継がれている。手のひらにちょうどいいサイズの榛原ノート(小花唐草)1,540円、ちいさい蛇腹便箋(波に鳥)550円。
7. 『堀口切子』のぐい呑み、醤油差し
テーブルで、美しく繊細なガラスのカットを堪能する
江戸後期に誕生した江戸切子。『堀口切子』は、1921年に初代秀石・堀口市雄が創業した『堀口硝子』をはじまりとし、孫であり三代秀石の堀口徹が技術と精神を受け継ぎ、2008年に設立された。代表文様の菊花文を現代風にアレンジしたぐい呑(KIKKA空色sora)2万4200円、醤油さし(kikka)2万2000円。
8. 『白木屋傳兵衛(しろきやでんべえ)』の肩払い
柔らかくて掃きやすい。職人技が光る箒は一生モノ
天保元(1830)年に銀座で創業し、京橋に移転。京橋は川沿いに竹屋が並ぶ竹河岸で、材料を仕入れやすい立地から箒の製造・販売をはじめたという。コシがあり軽い「江戸箒」は、長柄のものから小箒まで種類豊富。写真の肩払いは、グリップ(握り)があり、刷毛感覚で洋服払いからテーブルの上の小箒、絨毯の掃除にも使えて便利。赤い編み上げの装飾もお洒落。2,090円。
『クロワッサン』1145号より
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