渡辺“P”紀子 さんの「目利きの選ぶ江戸みやげ」──懐かしい風情をおみやげに。時を超えて愛される東京の名品
撮影・濱津和貴 スタイリング・伊東朋恵 文・梅原加奈
「ちょっと蘊蓄が語れる、美味しいもの」
渡辺“P”紀子さん フードライター
〈江戸みやげ〉は、9種のあられのふきよせ。中でもメインのえびせんは、愛知県知多や瀬戸内産のエビの小さな殻を剥き、身だけを使うそう。だからえびせんなのに白っぽく、品のある仕上がり。また、米は新潟の希少なもち米「〆張り餅」を使い、一流天ぷら店が用いる太白ごま油や綿実油でからりと揚げる。細やかな仕事ぶりが江戸の“粋”を伝えています。
もうひとつ、江戸の風情ある菓子といえば〈人形焼〉。私のおすすめは錦糸町の『山田家』。手みやげにしたら、箱を開けた瞬間、ずらりと並ぶたぬきたちに歓声が上がるはず。しっとりした生地と、北海道産小豆を大吟醸のように削って炊くあんこのバランスもちょうどいい。包装紙には、店の土地柄になぞらえて、江戸で流行った怪談噺「おいてけ堀」の絵が描かれているというのも蘊蓄(うんちく)が語れて楽しいものです。
1. 『江戸みやげ本舗 進世堂』の江戸みやげ
100年にわたり同じ手法で旬のエビを厳選して作るえびせん
明治初期の築地で、おかきやあられを扱う店として創業。その後、移転し現在の五反田へ。この〈江戸みやげ〉は、江戸っ子が手みやげとして重宝したえびせんをもとに考案された。えびせんをメインに品川巻き(海苔巻き)、茶巾(抹茶入り)、元禄(塩味の揚げ餅)など9種がふきよせに。140g 1,800円。60g入の10袋がセットになった缶入6,501円もあり。
2. 『山田家』の人形焼
七不思議にちなむ、たぬきがずらり。どこから食べるか迷うかわいさ
江戸時代、歌舞伎小屋の立つ歓楽街だった人形町。その名物として誕生したのが人形焼。もともと鶏卵卸問屋を営んでいた『山田家』は戦後に自慢の卵を使った人形焼店を開店。人形焼の形には「本所七不思議」に出てくるたぬきをはじめ太鼓、三笠、紅葉などが。店頭では好きな数を詰め合わせにできる。写真はネット通販も可能な〈たぬきセット〉16個入2,960円。
『クロワッサン』1145号より
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