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映画 『ベイビーガール』 誰もが羨む女性の胸に潜む危険な欲望 

文・兵藤育子

Movie『ベイビーガール』

話題作を次々と送り出すスタジオA24が、ニコール・キッドマンと手を組んだ、新時代のエロティック・エンターテインメント。監督・脚本:ハリナ・ライン 出演:ニコール・キッドマン、ハリス・ディキンソン、アントニオ・バンデラス 3月28日(金)より、東京・TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開。

映画 『ベイビーガール』 誰もが羨む女性の胸に潜む危険な欲望 

若くて野心的な男性が、自分よりも社会的地位の高い女性をあの手この手で誘惑する——。これまで幾度となく描かれてきた恋愛ドラマの定型パターンを踏んでいるのに、本作に新しさを感じてしまうのは、女性の目を通して描かれているからだろう。

その誘惑される女性を演じているのが、隙のないクールな美貌を誇るニコール・キッドマンというのも、“一体どんなことになっているのか”観たい気持ちをくすぐられる。

主人公のロミーは、ニューヨークで起業し、CEOとして成功を収めている。舞台演出家の紳士的な夫と2人の娘と、誰もが羨むような暮らしを送っているが、満たされない渇きを密かに抱えている。

そんなロミーを誘惑する、インターンのサミュエルとの出会いのシーンが印象的だ。ある日の出社途中、ロミーは飼い主の手を離れてしまった大型犬に、危うく襲われそうになるのだが、サミュエルが一瞬にして犬を落ち着かせてしまうのだ。そのなだめ方に彼女の欲望が反応したことを、サミュエルは動物的に見抜き、ロミーへの挑発が徐々にエスカレートしていく。

監督・脚本を手がけたのは、女優としてのキャリアも持つハリナ・ライン。『危険な情事』や『ナインハーフ』など往年のセクシャルムービーが好きだった一方、ファムファタールのような型にはめられた女性像に、不満も感じていたそう。

これらの多くが男性監督・脚本家によって作られてきたのに対し、ラインは女性を解放するメタファーのような作品にしたいと考える。

キッドマンをあて書きしたというロミーは、常に正しく、リスペクトされるCEO、家族を愛する良き母でありたいと思いつつ、サミュエルのほとばしるような若き魅力にも抗えない。

ときに大胆かつ奔放で、人間味あふれるその姿は、現代だからこそ描けた女性の素顔ともいえるだろう。スリリングな駆け引きは、どこへ向かうのか。ロミーの選択に注目したい。

CEOとインターン。年齢も立場も大きく異なるふたりが繰り広げる、予測不能なパワーゲームに息を呑む。
CEOとインターン。年齢も立場も大きく異なるふたりが繰り広げる、予測不能なパワーゲームに息を呑む。

ココが見どころ!

ロミーを誘惑するサミュエルを演じたのは、『逆転のトライアングル』『アイアンクロー』のハリス・ディキンソン。ロミーとふたりきりの面談を希望したり、「本当は命令されるのが好きなはず」と指摘したり、社員たちの飲み会でロミーを試すような行動をとったり……。

若者らしく傲慢で、自信に満ち溢れているかと思えば、繊細かつ純粋で愛らしさも覗かせるミステリアスなキャラクターは、ロミーならずとも目が離せなくなってしまう。

(C)2024 MISS GABLER RIGHTS LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
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Movie『ケナは韓国が嫌いで』

ソウル郊外で家族と暮らし、仕事にも恋愛にも明るい未来を感じられない28歳のケナは、単身ニュージーランドへ移り住む。ケナを演じるのは、『グエムル‐漢江の怪物‐』で主人公の娘役として一躍有名になったコ・アソン。

韓国を出たらそこは夢の世界……というわけにはいかないものの、少しずつ居場所を見つけていく自然体な生き方が美しい。

監督・脚本:チャン・ゴンジェ 出演:コ・アソンほか 東京・ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国公開中。

(C)2024 NK CONTENTS AND MOCUSHURA INC. ALL RIGHTS RESERVED.
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Movie『シンシン/SING SING』

舞台はニューヨークにある最重警備の収監施設「シンシン刑務所」。無実の罪で収監された男が、収監者更生プログラムである舞台演劇グループに所属。友情を育み、希望を見出す姿を描いた感動の実話。

主要キャストの85%以上が同刑務所の元収監者で、実際に演劇プログラムに関わってきた人たち。演技を超えたリアリティに胸を打たれる。

監督:グレッグ・クウェダー 出演:コールマン・ドミンゴほか 4月11日(金)より、東京・TOHOシネマズシャンテほか全国公開。

(C)2023 DIVINE FILM, LLC. All rights reserved.
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『クロワッサン』1138号より

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