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いくら必要?何に使うの?一番気になる「介護のお金」

最大の心配ごとともいえる、介護のお金。いざとなってから慌てることがないよう、元気なうちに話し合うことが肝心です。

イラストレーション・朝倉世界一 文・黒澤 彩

いくら必要?何に使うの?一番気になる「介護のお金」

初めて介護を経験するとき、何よりも不安なのがお金の問題。子どもが負担する必要はあるのだろうか?

「親自身のお金を使うことが基本ではありますが、民法上の扶養の義務というものがあるので、親にお金がない場合は子どもがサポートするしかありません」と話すのは、家族信託コーディネーターの牧本和代さん。

そもそも、親の資産を把握できていない人があまりにも多く、本人の判断能力が低下してから対策しようにも後手になってしまうことも。それだけは避けたい!

「銀行の預貯金はもちろんですが、投資信託や国債などの有価証券、そして不動産。この3つについて、どこにどれだけあるのか、不動産の名義はどうなっているのかを把握しておきましょう。そのためのコミュニケーションを深めることが初めの一歩です」

親と老後について話をしたことがある?

いくら必要?何に使うの?一番気になる「介護のお金」

お金のこと以前に、親自身が自立して生活できなくなったときにどうしたいのかをそれとなく聞いてみよう。施設に入りたいのか、自宅で過ごしたいのかなどの意向を知っておきたい。

親の預金額を知っている?

いくら必要?何に使うの?一番気になる「介護のお金」

8割の人が知らないという結果。介護費用の備えをするためにも、親が自分で管理できているうちに、大まかな資産くらいは把握しておくのが理想だが、聞き出すのは至難の業かも?

親の介護施設入居費用に、誰のお金を使う?

いくら必要?何に使うの?一番気になる「介護のお金」

多くの人が「親のお金」と回答。にもかかわらず親の預金額は知らないというところが問題。実態としては、介護費用について「親のお金でなんとかなる、はず」と思っている人が多いようだ。

ステップ1:「介護のお金」にまつわる困りごとは、どんなものがあるのか?

ケース その1「親の総資産が把握できていない」

高齢で一人暮らしだが、週に3日は仕事をしていた父。まだ現役バリバリなので安心と思っていたけれど、転倒、骨折で入院したことをきっかけに急激に認知機能が低下。自分の生年月日もわからないほどに。どこに、どのくらいお金があるのか本人にも聞き出せなくなってしまった。

キャッシュカードを家で見つけるも、暗証番号がわからず、お金を引き出せない!

解決策・予防策
高齢者は入院をきっかけに急にガクッと体調が変化してしまうので、早めに資産の把握、家族信託などの備えを。親のお金を引き出せなければ子どもが立て替えるか、成年後見制度を利用することに。

ケース その2「介護費用のあてにしていた家が売れない」

母は認知症で数年前から施設暮らし。今年、父も要介護となったため、誰も住まなくなる実家を売って父の施設入居費用にあてようとしたところ、なんと実家は両親の共同名義になっていて、権利の4分の1を母が持っていることが判明。母は認知症なので契約ができず、家を売れないという事態に。

解決策・予防策
実家の名義が複数人というケースは実際にあるので、一度、登記を確認しておく。認知機能が低下して親自身が売買できなくなる事態に備えるなら、家族信託で子どもの名義に変更しておくのが有効。

ケース その3「兄弟同士で親のお金について揉めている」

母が要介護になり、今後のことについて話し合うため兄弟で集まったところ、同居する長男が母のキャッシュカードを使って勝手にお金を引き出していたことが発覚。さらに、「なにかあったとき用に」と言って母のタンス預金500万円も渡されていた。

長男は「同居して面倒をみているんだから当然」と開き直るが、大揉めに。事前に母本人も含めてお金の話をしなかったことを後悔。

解決策・予防策
親のお金を受け取っていると贈与とみなされる可能性も。相続時の配分にも影響するため、兄弟間で揉める要因になりやすい。親子間、家族間であっても、安易にお金のやりとりをしないこと。

ケース その4「親の介護にお金がかかるが、子にもお金がない」

在宅で介護を受ける母。この先、要介護度が上がれば施設入居も検討しなければならないが、母の預貯金は少なく、底をつくのも時間の問題。かといって同居の長女も貯蓄がなく、収入も低く、自分の生活費を得るだけで手いっぱい。

本当にお金がなくなったら、親は介護を受けられないのかと不安に。

解決策・予防策
公的介護保険の範囲内でどの程度のサービスが受けられるのかをケアマネジャーに相談してみよう。公的な介護保険施設である特別養護老人ホームでは、所得に応じた費用の減免を受けられる場合も。

ステップ2:何にどれくらいかかるか知っておく

居宅か施設か、また施設のグレードによっても費用は変わるが、あくまでも目安として、平均額が参考になる。

「全体を平均化すると自己負担分は5年で500万円以上といわれています。介護の費用は年数でだいぶ変わってくるのが難しいところ。5年というのは平均なので、1、2年の人もいれば、10年以上の人もいるわけです。いくらかかるのか予測できませんし、いくらあれば安心とも言いにくい。期間をどのくらいと見積もるかがポイントです」

月々の費用を本人の年金で賄えるなら、一時費用と予備費があれば足りることになる。年金額が少ない場合は、資産の取り崩しや子どもの援助を含め、どの程度の負担額なら5年、10年と持ち堪えられるかを計算してみよう。

まとまった資産があるからと高額な施設に入居すると、期間が長くなった場合に払い続けられなくなる心配も。

「親自身がどのくらいのグレードの施設に入りたいと思っているのかを聞いたり、いま住んでいるところの相場感を調べておくことも必要でしょう。どこで、どんな老後を過ごしたいのかという希望がわかって初めて、具体的な費用が見えてきます」

介護には平均、どれぐらいの費用がかかるか

(生命保険文化センター「生命保険に関する全国事態調査」2021年度より)

平均介護費用
一時費用 74万円
 月額 8.3万円(居宅4.8万円 施設12.2万円)

居宅と施設入居とでは居宅のほうが費用を抑えられるが、賃貸であれば家賃があり、持ち家の場合もバリアフリー改修費などがかかる。下のコラムで触れたインフォーマルケアコストも、居宅のほうが大きい傾向。

介護費の内訳
一時費用:介護施設入居費、特定福祉用具購入、住宅改修費用。
月額費用:介護施設利用料、介護サービス利用料[訪問介護、訪問看護、デイケア(通所リハビリテーション)、ショートステイ(短期入所療養介護)]、福祉用具貸与、食費、光熱費、その他(オムツなど)。

平均介護期間
5年1カ月

内訳を見ると、10年以上が17.6%で4〜10年未満が31.5%。約半数が4年以上という結果。介護期間が長くなればそれだけ費用も増えるだけでなく、要介護度が変わり途中から施設に入ることも。

インフォーマルケアコストとは?

家族や近親者が無償で行う介護の負担「インフォーマルケアコスト」をご存じだろうか?

たとえばデイサービスを利用すると、送り出しや帰宅後の着替え、夜間のケアといった部分はサービスに含まれないので家族が行わざるをえない。そうした公的ケアの隙間を埋めるための目に見えない負担が、インフォーマルケアコストだ。家族が介護に割く時間を金額に換算すると、介護費そのものと同程度になるとの指摘もある。介護費用を抑えるほど、その分、家族の負担が増していくことを知っておこう。

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