小さな家なら、もっと快適な暮らしーーエッセイスト・広瀬裕子さん
撮影・黒川ひろみ 文・嶌 陽子
無理や負荷を減らすこと快適さにつながる
広瀬裕子さん(エッセイスト 59歳)
「2LDK 120平米」から「1LDK 45平米」に住み替え
広瀬裕子さんが香川県から生まれ育った東京に戻ってきたのは1年半前。60歳を前にして、これからの暮らしを考えるためだったという。新しい住まいは、それまで暮らしていた一軒家の3分の1ほどの広さのマンションだ。
「以前から出張でホテルに泊まるたび、コンパクトな空間でも快適に過ごせると感じていました。小さな家でも工夫次第ですっきり暮らせると思ったんです」
持っていた家具をいったん全て運び込んだものの、少しずつ手放し、今はソファもベッドもない生活。インテリアの色も白、黒、グレーに絞り、ゆったりとした静謐な空間を作り上げている。
「掃除が楽になり、空間の隅々にまで意識が届くように。無理や負荷を減らすことが、年を重ねていくうえでの快適さにつながるのだと実感しています」
BEFORE:大きな家具を手放し、壁や床を埋め尽くさない
引っ越した当初はベッドや机を置いていたが「家具をよけながら暮らす不便さや体調が悪いときによろけてぶつかる危険さを感じて手放しました」。暮らしやすくなったうえ、壁や床がすっきりして広く感じるように。
くつろぎスペースにはソファでなく椅子を
もともと持っていた3人掛けのソファは場所を取るのでやめ、代わりにくつろぎスペースには、アルネ・ヤコブセンのスワンチェアを。ここで本を読んだり映画を見たり。「ホールド感があるのでゆったりできます」
服は枚数を決め、食器はよく使うものだけに
「服の数はジャンルごとに3枚や5枚と決め、なるべくオールシーズン着られるものを選んでいます」。器は繊細な作家ものは減らし、ロイヤルコペンハーゲンを中心に、扱いやすく、買い足しやすいものを厳選。
一つで何役もこなす、フレキシブルな家具を活用する
25年ほど愛用中のハンス J. ウェグナーのネストテーブルは新居でも活躍。「3台重ねられるので場所を取らないし、一つは小物を置いたり、もう一つはサイドテーブルとして使ったりと、場所や用途を選ばず使えます」
ベッドから布団にシフトし、寝具はクローゼットに
床面積を広く確保するため、ベッドをやめて布団生活に。朝起きたら布団を畳んで作り付けのクローゼットに収納している。「負担を軽くするため、寝具はコンパクトで重くなく、洗えるものを選びました」
1人で動かせるコンパクトな家具を選ぶ
新居で唯一買ったのがアルネ・ヤコブセンらデザインのスーパー円テーブル。「今後のことを考え、1人で動かせる大きさと軽さのものを選びました。最大で6人座れます」。圧迫感がなく、コンパクトな空間によく合う。
『クロワッサン』1126号より
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