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『そこに光が降りてくる 青木野枝/三嶋りつ惠』東京都庭園美術館【青野尚子のアート散歩】

文・青野尚子

火との闘いから生まれた光が宿る。

水の泡のようにも見える鉄のオブジェを作る青木野枝。ガラスで有機的な形を生み出す三嶋りつ惠。二人の作品が〈東京都庭園美術館〉で出合う。

青木は工業用の鉄を溶断して線や円を切り出し、そのパーツをつなぎ合わせてオブジェを作る。作品は重いはずなのに、その印象はどこまでも軽やかだ。

青木野枝《もどる水》2023年 gallery21yo-j(東京)展示風景 (C)Noe Aoki, courtesy of ANO MALY(撮影:山本 糾)
青木野枝《もどる水》2023年 gallery21yo-j(東京)展示風景 (C)Noe Aoki, courtesy of ANO MALY(撮影:山本 糾)

三嶋は1989年からヴェネチアに移住、千年にわたって伝統技術を受け継いできたムラーノ島のガラス職人たちとコラボレーションしている。ムラーノ島のガラスはカラフルな色合いで有名だが、三嶋は無色透明なガラスにこだわる。

三嶋りつ惠《INFINITO》2022年 (C)Ritsue Mishima, courtesy  of ShugoArts(撮影:Francesco Barasciutti)
三嶋りつ惠《INFINITO》2022年 (C)Ritsue Mishima, courtesy of ShugoArts(撮影:Francesco Barasciutti)

二人には光への特別な想いがある。青木は鉄を溶断するときに現れる「透明な光」からインスピレーションを得てきた。「鉄はいつも内部に透明な光をもっている」と彼女はいう。三嶋はガラス作品を通して「光の輪郭」を描こうとする。

「私のガラスは周りの光や色をとらえて解き放つ」と三嶋はいう。

舞台となる〈東京都庭園美術館〉は皇族朝香宮夫妻が1933年に建てた自邸だ。フランスに滞在した経験のある二人はルネ・ラリックやアンリ・ラパンら、フランスで活躍していたアール・デコのデザイナーらに内装を依頼した。今回の二人の作家が使う鉄とガラスという素材は美術館のインテリアにも頻出する。青木の鉄も三嶋のガラスも火と格闘することで形になる。原初のエネルギーを宿すオブジェがアール・デコの空間に佇む。

東京都庭園美術館 本館 第一階段
東京都庭園美術館 本館 第一階段
生まれたばかりの新作や作家インタビュー、制作工程がわかる映像などの資料も展示される。
 
 『そこに光が降りてくる 青木野枝/三嶋りつ惠』
11月30日(土)~2025年2月16日(日)
●東京都庭園美術館(東京都港区白金台5・21・9) 
TEL.050・5541・8600(ハローダイヤル)
10時〜18時(11月30日、12月6日、12月7日は〜20時)
月曜、12月28日〜1月4日、1月14日休(1月13日は開館)
観覧料一般1,400円ほか
  • 青野尚子 さん (あおの・なおこ)

    アート・建築関係のライター

    著書に『超絶技巧の西洋美術史』(池上英洋さんとの共著、新星出版社)など。

『クロワッサン』1130号より

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