江口洋介さん「長いセリフで煮詰まったら、ちょっと走りに行ってリセットして寝る。翌朝また頑張る、その繰り返しの毎日かなあ。」【今会いたい男】
撮影・小笠原真紀 スタイリング・伊藤省吾(sitor) ヘア&メイク・中嶋竜司(HAPP’S.) 文・木俣 冬
長いセリフで煮詰まったら、 ちょっと走りに行ってリセットして寝る。 翌朝また頑張る、その繰り返しの毎日かなあ。
本誌の撮影がはじまる前、江口洋介さんはノリのいい音楽をかけた。
「’60〜’70年代ぐらいの曲が好きでよく聞いています。作品の撮影中は、メイクしているときなどに、その作品や役に合った音楽を聞いてテンションを上げることもありますよ」
’80年代から第一線を走り続けている。俳優・江口洋介のイメージが圧倒的だが、アーティスト・江口洋介の顔も持つ。2023年にはアーティストデビュー35年を迎え、この10月にはミニアルバムを発表し、ライブも行った。50代半ばにして世界を広げている。
「長いこと、俳優一本に絞っていましたが、いまは考えが変わりました。自分のイメージを限定しないほうがいいんじゃないかなと思って。芝居の現場と音楽の現場は全然違って、どちらもやることで相乗効果があるんですよ」
俳優としても、主演もやれば脇でも大活躍。『るろうに剣心』の新選組隊士・斎藤一や『コンフィデンスマンJP』のマフィアのボス・赤星など、主人公と拮抗する役は物語をぐっと引き締める。
「主演や脇というポジションではなく、作品のテーマへの興味や演じていて楽しめるかなどを基準にしています」
最新主演作『連続ドラマW 誰かがこの町で』は集団による同調圧力と忖度の恐怖を描いた社会派ミステリー。過去の体験から生きがいを失くしながらも、必死に生きている役を演じた。「この役の性格上、自分の個性やこだわりは消して演じてみました」と振り返る。抑制された佇まいも魅力的だ。
「とても長いセリフがあって手強かったんですよ。でも自分がこれまで体験した分だけセリフから思い浮かぶことがある。だからこそ、芝居も音楽も主演も脇も、あらゆることをやっていたほうがいいのだと感じています」
メンタルに響きそうな役や、覚えるのが難儀なセリフに向き合う必要があるときはどうしているのでしょうか。
「寝る前にランニングしたりします。全然違う神経を使ってその日のうちにストレスを除くようにしています。メンタルの疲れにはフィジカルにアプローチするのがいいんですよ。マシーンに頼らず、実際に外に出て歩き、走ることってやっぱり基本だと思いますね」
『クロワッサン』1130号より
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