日本のポップスの歴史を動かした、米西海岸ロックの名曲。【高橋芳朗の暮らしのプレイリスト】

日本のポップスの歴史を動かした、米西海岸ロックの名曲。

イーグルスへの楽曲提供など1970年代アメリカ西海岸ロックの隆盛を陰で支えた重要人物、シンガーソングライターのJ.D.サウザーが9月17日に他界しました。78歳でした。

サウザーの名は知らなくとも、彼の1979年のヒット「You’re Only Lonely」を耳にしたことがある方は多いと思います。たとえば、19
91年公開の映画『波の数だけ抱きしめて』の挿入歌として。あるいは、2006年放映の三菱・アウトランダーのCMソングとして。この曲の長年にわたる日本での人気の高さは、本国をも凌ぐものがあるでしょう。

そんな「You’re Only Lonely」は日本ポップス界の巨人、大滝詠一に絶大な影響を与えたことでも知られています。ロイ・オービソンのオールディーズ名曲「Only The Lonely」（1960年）を土台にして見事コンテンポラリーな「大人のロック」を生み出したサウザーの手腕に刺激を受けた大滝は、これぞ自分が理想とする音楽、と一念発起。80年代のサウンドを通して往年のアメリカのポップスにオマージュを捧げた傑作『A LONG VACATION』（1981年）を作り上げました。

そして、大滝は『A LONG VACATION』の成功を受けてその対になる作品を制作。それが松田聖子の転機になった『風立ちぬ』（1981年）です。こうした流れを踏まえると、ある意味「You’re Only Lonely」は日本のポップスの歴史を動かした曲とも言えるのではないでしょうか。