藤井隆さん「失敗して落ち込むこともたくさんあります。」【今会いたい男】
今度出演する舞台はどんな作品なのでしょうか。
撮影・天日恵美子 スタイリング・奥田ひろ子(ルプル) ヘア&メイク・柳 美保(トロン東京) 文・木俣 冬
「前売りチケットは “長い約束”のようなもの。 その約束を果たしたい。」
着ていたジャケットを自ら脱いで、藤井隆さんは撮影に臨んでくれた。春らしく爽やかで、笑顔も一層映える。
吉本新喜劇から芸能活動をはじめた藤井さん。笑いに芝居に歌にと、見る人を笑顔にするエンターテイナーだ。
「この数年、震災やコロナ禍で、エンターテインメントは不要不急と言われてつらい時期もありました。ようやく公演が再開したときお客さんがめちゃくちゃ拍手をくださって。見てくださる方の反応によって僕は元気になれるのだとしみじみ感じました。食べることが大好きだから食べ物でも笑顔になれますが、やっぱり『見てくださーい』と投げかけたら『見てるよー』と返してくれて、笑ったり『よかったよ』と言われたりすることが一番うれしいです」
藤井さんは、前売りチケットを買うことを「〝長い約束〟のようなもの」と、まるで詩のように表現した。
「その約束を果たすためにスタッフさんと力を合わせ全力を尽くしています」
今回の出演作『カラカラ天気と五人の紳士』は、吉本新喜劇のような爆笑喜劇や、シチュエーションコメディなどとはまた違う、独特の手触りの、ちょっとシュールな内容だ
「出演者は5人の男性と2人の女性なのですが、時々、5人が2人に思えたり、2人でひとりの人格のようにも僕は感じて楽しんでいます。台本をケラケラ笑いながら読んでいたら、ページをめくった途端にまったく違うことを言い出して、面くらうことも。でもそれがとても面白いんですよ」
専門用語では“不条理劇”というジャンルになるが、「わからないです。ご覧いただく方にご自由に楽しんでいただくのが一番うれしいです」と言う。
『新婚さんいらっしゃい!』の2代目司会もやっているだけあって、藤井さんの語り口は流れるように見事だ。
「出演作の取材の初日は手探りでお話しするので、それが記事にまとまったものを読むと、こういうふうに言えばいいんだと学ぶことがよくあります。その一方で、全然覚えのないことが書いてある記事がネット上にずっと残ることもあって。それを信じて読んだ方がその話題を振ってこられると、それは違うんですと説明しないといけない。それこそ不条理だと思います!」
そんなふうに話を面白くつなげてくれて、取材の場は笑いに包まれた。どうしたらいつもご機嫌でいられるのか。
「失敗して落ち込むこともたくさんあります。でも仕事の場合は落ち込んでいたらはじまらない。自分が落ち込んだことで仕事を止めてしまうのはナンセンスだから。ネクスト、ネクストと気持ちを切り替えるようにしています」
Tシャツ9,900円、シャツ3万5200円、パンツ2万8600円(以上ヨシオクボTEL.03・3794・4037)
『クロワッサン』1115号より