『ジョージ ホイニンゲン=ヒューン写真展』シャネル・ネクサス・ホール【青野尚子のアート散歩】
文・青野尚子
シャネルの美意識を捉えたモノクロームの写真。
ロシア革命の際、故郷のサンクト・ペテルブルクを離れてパリに移ったジョージ・ホイニンゲン=ヒューン。彼がガブリエル・シャネルと出会ったのは1920年代のパリでのことだった。
銀座にあるシャネルのアートスペースで開かれる彼の個展は日本で初めてのもの。ファッションを始めとする彼の写真を堪能できる。
ホイニンゲン=ヒューンはシャネルだけでなくサルバドール・ダリやジャン・コクトーら彼女の友人たちとも交流を深めた。彼が『ヴォーグ』や『ハーパース・バザー』のために撮ったシャネルのルックではスタジオの照明を巧みに操って、モデルのシルエットや繊細なファブリックの質感を際立たせている。
シックなスーツ、リラックスしたビーチウェア、ラグジュアリーなイヴニングドレス、どれもシャネルの美意識を的確に捉えたものだ。彼はアール・デコや新古典主義、バロック様式など歴史上の偉大な画家や建築家からインスピレーションを得たドラマチックな画面を構築していた。また「モデルは一人の女性であり、石膏像ではない」とコメント、被写体の人間性を重視した写真を残している。
ホイニンゲン=ヒューンはガブリエル・シャネルを「現代女性のニーズと好み」を深く理解した「聡明な女性」と評していた。稀代のクリエイターだった二人のつながりから生まれた、唯一無二の美に浸れる。
『ジョージ ホイニンゲン=ヒューン写真展』 2月7日(水)~3月31日(日)
●シャネル・ネクサス・ホール(東京都中央区銀座3・5・3 シャネル銀座ビルディング4F)
TEL.03・6386・3071 11時~19時 会期中無休
入場無料
ストックホルムのジョージ・ホイニンゲン=ヒューン・エステート・アーカイブス所蔵の作品を展示。代表的なファッション写真のほか著名人のポートレート、世界各地の風景や人々の飾らない姿も見られる。
(C)The George Hoyningen-Huene Estate Archives
『クロワッサン』1110号より