柿澤勇人さん「自分を追い込まなければ演れない役ばかりをいただきます(笑)」【今会いたい男】
撮影・小笠原真紀 スタイリング・五十嵐堂寿 ヘア&メイク・松田蓉子 文・黒瀬朋子
「自分を追い込まなければ演れない役ばかりをいただきます(笑)。」
大河ドラマ『鎌倉殿の13人』の源実朝役で、全国的な人気を博した俳優の柿澤勇人さん。来年1月には三谷幸喜さん作・演出の新作舞台『オデッサ』に主演する。大河でも共演した宮澤エマさん、迫田孝也さんとの3人芝居だ。
「3人だけの会話劇。セリフの量も膨大で、英語も日本語も方言も話さなければならないので、セリフに自由に感情を乗せられるようになるには、幕が開いた後も言葉の練習をし続けなければいけないと思っています(笑)」
今年の頭には過去に歴代スターたちが担ってきた、ミュージカル『ジキル&ハイド』の主役の3代目を務めるなど、今やミュージカル界で欠かせない存在に。俳優を目指したきっかけは、15歳の時に出合った劇団四季だった。サッカー一筋でプロを目指していたが、『ライオンキング』を観て、主人公のシンバをやりたい!と進路を大きく変更した。
「あの時に観た演目がもしも『キャッツ』や『オペラ座の怪人』だったら、俳優にはなっていなかったと思います。当時は、筋肉も今より10キロ近く多くありました。逞しいシンバに自分を投影したのでしょうね。その後の未来につながると直感したのは、後にも先にもその時だけ。なぜできると思ったのか、自分でも理由はわからないんです」
有言実行。その後、20歳で劇団四季に入団し1年半という早さで主役を勝ち取るも2年で退団、休んでいた大学を卒業。
そして、再びミュージカル『デスノート』『メリー・ポピンズ』や舞台『海辺のカフカ』ほか、数々の大作で活躍する。若くして次々に大役を任されてきたその裏には、どれほどの血のにじむ努力があったことだろう。
「僕は自分を追い込みたいとも、それが美学だとも思っていないんです。できることなら、もっと楽しく、ラクもしたいのですが、追い込まないと演れない役ばかりをいただきます(笑)」
柿澤さんがすごいのは、評価されてもそこに安住しないところだ。
「海外には、ストレートプレイもアクションもミュージカルもできる俳優がたくさんいます。日本はどうしてもジャンルに括られがちですが、そこは抗って、いろいろやっていきたいです」
柿澤さんが思う理想の大人は「優しい人」だと言う。
「先日、ある大スターの大先輩とご一緒させていただいたのですが、ものすごく優しいんです。大変な経験もされてきたから、優しくいられるのだろうと思います。僕はまだまだですね。でもまだ丸くなる必要はないのかな(笑)」
『クロワッサン』1107号より
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