ボサノヴァの女王が遺した歴史的名曲「イパネマの娘」【高橋芳朗の暮らしのプレイリスト】
ボサノヴァを世界に広めた素朴で物憂げな歌声。
スタン・ゲッツ&ジョアン・ジルベルト feat. アントニオ・カルロス・ジョビン、 アストラッド・ジルベルト
『The Girl from Ipanema』
「ボサノヴァの女王」として親しまれてきたブラジル出身のシンガー、アストラッド・ジルベルトが6月5日に亡くなりました。83歳でした。
アストラッドはブラジル発祥のボサノヴァを世界に広めた最大の功労者のひとり。彼女の素朴で物憂げな歌声が日本や欧米におけるボサノヴァ観を決定づけたと言ってもいいでしょう。
そんなアストラッドの代表作が、1964年発表のボサノヴァの代名詞的スタンダード「The Girl from Ipanema」。ジャズサックス奏者のスタン・ゲッツと当時彼女の夫だった「ボサノヴァの神様」ことジョアン・ジルベルトが連名で作ったアルバム『Getz/Gilberto』の収録曲です。
この「The Girl from Ipanema」は、当時23歳だったアストラッドの最初のレコーディング作品。もともと彼女は歌う予定ではありませんでしたが、ジョアンの提案により急遽参加することになりました。
完成した曲は5分以上に及びましたが、プロデューサーはシングル化にあたりポルトガル語で歌った主役ジョアンのパートを大胆にも全面カット。英語詞のアストラッドの歌を軸にした短縮版を作って発売しました。
これが見事に功を奏して「The Girl from Ipanema」は全米チャート5位にランクインする大ヒットを記録。ボサノヴァの存在を世界に知らしめた歴史的名曲は、言わば想定外の産物だったのです。
『クロワッサン』1099号より