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自分の軸がなくてお金が貯まらないタイプを、行動経済学で診断!

つい繰り返してしまう消費パターンには心理的な法則が。無意識のクセを知って、お金と上手に付き合おう。

撮影・豊田 都 イラストレーション・サンダースタジオ 文・黒澤 彩

あなたの悪癖を診断! 処方箋付きで解説します。

【自分の軸がない】タイプ

□ みんなが買っているもの、売れているものを買いがち。

●同調効果、バンドワゴン効果

みんなと同じものや流行りものばかり買ってしまうのはなぜ?

「集団で生きる動物である人間は、無意識下では集団に同調するのがよいととらえる本能を持っています。それが、同調効果です」

人は、間違っていると思っても、みんなが正しいと言えば自分も正しいと言ってしまう傾向があるのだという。同調するものは世間の流行にかぎらず、誰か個人である場合も。

「よく似た現象に、バンドワゴン効果があります。バンドワゴンとは楽隊の先頭車両、つまり大きな音を鳴らして進む存在で、人は皆、その後をついていってしまう。誰かが買っているから自分も買いたいという心理が連鎖し、同調する人がどんどん増えることで流行が生まれます。流行っているものや人が持っているものを欲しくなったら、これらの効果が作用しているのでは?と、自分を疑ってみる必要があるかもしれません」

□ 人との関係を保つために、身の丈に合わない消費をする。

●アンカリング効果

背伸び消費とは、悪く言ってしまうと見栄を張っている状態。それでも家計に影響がないのならいいけれど、どこかにしわ寄せがいっているとしたら見直したい。

「自分よりも収入の高い人たちとお付き合いをしなければならないことって、ありえますよね。そうすると、その人たちと同じレベルのものを買ったり、似たような消費行動をしようとする。これはアンカリング効果によるものです」

錨を下ろした船をイメージしてみよう。錨(=周囲の人たちの生活レベル)が価値判断の基準となり、船(=自分)は、錨に繋がれた狭い範囲でしか判断、行動ができなくなる。

「目の前の現実ではなく、基準となる別の価値観によって判断が歪められてしまうのが、アンカリング効果です。そのことに気づかないと、自分を見失ったままで、お金のやりくりもなかなかうまくいきません」

□ お店で買うよりもネット通販がラクで、頻繁に利用する。

●利用可能性ヒューリスティック

実店舗での買い物とネット通販との手順を比べてみよう。店で買うなら、(1)商品の情報を見て、(2)興味を持ち、(3)欲しくなり、(4)記憶しておき、(5)店に行く、という5つのステップが必要。

ところがネット通販では(4)と(5)は必要なく、欲しいと思った瞬間に購入できる。

「あるいは、見ていたページとはまったく関係のない、サイド広告で目に入った商品を買ってしまうことも。このように、目の前にある情報が購買行動にすぐ結びつく仕組みになっているのです」

行動経済学では、直近に得た情報や印象の強い出来事など、“取り出しやすい”情報をもとに行動することを、利用可能性ヒューリスティックという。

「それに基づいて判断をすると失敗することが多いとされます。ネットでの買い物で失敗しないためには、いったんカートに入れて1日以上時間をおくのが有効です」

【処方箋】絶海の孤島に持っていくか考える

果たして、これは本当に心から欲しいものなのだろうか? 自分の判断に自信が持てないときには、極論として「これを絶海の孤島にも持っていきたいかどうか」と考えてみるのも一手。劇薬だが悪癖を直すリハビリに。

自分の軸がなくてお金が貯まらないタイプを、行動経済学で診断!
自分の軸がなくてお金が貯まらないタイプを、行動経済学で診断!

そんなに無駄遣いしていないのに、お金が貯まらない。そう思っているのはあなただけではありません。

「無意識に繰り返している“クセ”に気づくことが、お金との付き合い方をあらためる第一歩です」

と話すのは、行動経済学に詳しい橋本之克さん。ビジネスや暮らしに役立つ実用的な学問として注目されている行動経済学とは、どんなもの?

「簡単にいえば、心理学と経済学を合わせた学問です。お金に関して、人は必ずしも合理的に行動するわけではありません。あまり深く考えずに衝動買いしたり、不要なものにも惰性でお金を払い続けたりしますよね? そうした人間の“不合理さ”を解き明かしてくれるのが、行動経済学です」

ひとつ例を挙げてみよう。お腹が空いているときにスーパーに行って、予定外にたくさん買い込んでしまった経験はないだろうか。この行動には、現在の状態が将来もずっと続くかのように思ってしまう「投影バイアス」の法則が当てはまる。

ほかに、買ってきただけの既製品よりも、ひと手間かけて完成させた品のほうに愛着を感じやすい「IKEA効果」なんていうものも。時代とともにアップデートされている、生きた学問でもある。

行動経済学を知ると、お金にまつわる悪いクセは、たしかに無意識の深層心理からきていると納得。

「さまざまな法則を意識できるようになると、トラップに引っかかって損することを防げ、ひいては得することが増えます」と橋本さん。自分の不合理さを認めることで、ストレスが減って生きやすくもなるという。

「ダメな自分を認められれば、悪いクセが出そうになったときに、『あ、これは!』と気づいて踏みとどまれることもあるでしょう。反対に、不合理さを認められず『悪い消費じゃない』と自分に言い聞かせるのは、とても苦しく損をし続けることにもなります」

さらには身近な人への理解も深まる。夫の不可解な買い物に潜む心理だって、はたと理解できるかもしれない。

「お金は、稼ぐのと同じくらい使い方も大切なものです。それによって家族との関係や人生のクオリティまで変わってきます。お金の使い方をできるだけ間違えないための、“転ばぬ先の杖”として行動経済学を知っておけば、きっといいことがありますよ」

行動経済学を知ることのメリット とは 

・間違った判断や罠にはまることを防げる

・損することが減り、得することが増える

・モヤモヤから解放されて生きやすくなる

・身近な人の価値観を理解できるようになる

  • 橋本之克

    橋本之克 さん (はしもと・ゆきかつ)

    マーケティング&ブランディング ディレクター

    広告代理店などを経て独立後、コンサルタント、講師、著述家として活躍。著書に『世界最前線の研究でわかる! スゴい! 行動経済学』などがある。

『クロワッサン』1048号より

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