「香り」が心の支えになることもある。【杏 喜子さん×草場妙子さん 対談】
撮影・MEGUMI 文・入江信子
生きることと直結しないけれども、心や気分を豊かにしてくれますね。(杏さん)
香りは精神に影響を与えるもの。それが回り回って健康につながる。(草場さん)
自然な素材を操り、人の心に訴えかけるフレグランスをつくり続ける、杏喜子さん。その人自身の「肌の香り」から「香りのスキンタイプ」を見極め、フレグランスを選ぶというカウンセリングメソッドはユニークそのものだ。一方、ヘア&メイクアップアーティストとして活躍しながら、ボディケア製品もプロデュースした草場妙子さんは、日常生活における香りの力を知り尽くした人。その香り使いとは……?
杏喜子さん(以下、杏) 草場さんは、昔からフレグランスがお好きだったんですか。
草場妙子さん(以下、草場) 好きではあるんですけれど、自分自身を香らせるという習慣があまりなくて。日常のアイテム、シャンプーやボディケアなどを使うときに、いい香り、気に入った香りに包まれるというのは好きですが、後にずっと残したいかといわれるとそうじゃない。スーッとフェイドアウトしていくのが心地いいなあと。
杏 私も家の中ではいっしょです。たとえばディフューザーで、ずっと同じテンションで同じ精油を香らせていると、脳が疲れるし、慣れて耐性ができて、香りが効かなくなっていくんですね。アロマテラピーは瞬間の香りを瞬間的に効かせるためのもので、消えてなくなっていかないとダメなんです。
草場 なるほど。私は仕事の日は、ルームスプレーを持参して、メイクを始める前に必ずひと吹きするようにしています。するとほかのスタッフの方も、「いい匂いがしますね」って。空間をクリーンにしたいと思って使っているのですが、その清涼感というのはみなさんにも伝わるみたいで。
杏 それはいい使い方ですね。草場さんは、ボディケアの香りをプロデュースされたそうですが。
草場 はい、「オサジ」というブランドとのコラボレーションなんです。
杏 (製品の香りを嗅ぐ)スッキリしていますが、ふくよかさも感じます。
草場 男女ともに使えることを意識した香りです。私はぜひセージを用いたいと思ったのですが、クセのある香料でもあるので、ローズマリー、ティーツリー、レモンなどをブレンドしました。でも柑橘系って強いんですね。少量入れただけでもすごく存在感が出る。
杏 柑橘系は分子の粒子が細かいから、インパクトが出ますね。
草場 配合によって香り方がまったく違ってくるし、本当に面白いです。
フレグランスは女性としての気分を盛り上げてくれるもの。
杏 暮らしの中の香りとは別に、私の場合、「素敵な女性は自分だけのフレグランスを持っているもの」という幼少期の刷り込みがありまして。小学生のとき、学校の図書室でココ・シャネルの伝記を読んだら、「香水をつけずに外に出るのは、下着をつけていないのと同じ」というような記述があったんですね。そして私も自分自身の、飽きずに1本使い続けられるフレグランスが欲しいと思うようになりました。結局見つからなくて、自分でつくり始めたんですけど……。今は、アロマテラピーは暮らしの一部として、気分の調整のために活用し、フレグランスは女性としての気分を盛り上げるというような使い分けをしています。
草場 気分を盛り上げる……私にとってのメイクですね。
杏 そうだと思います。装いの最後にひと匙、みたいな。草場さんは、スッキリした香りがお好きなんですよね?
草場 はい。自分の顔立ちとか容姿はどちらかというと、少し甘いほうに寄っていると思うんです。けれど、自分ではその路線ではいきたくなくて、ボーイッシュなファッションをしたり、キリッとしたメイクが好きだったりして、香りも甘いものはあまり欲していないかもしれません。
杏 よく、自分がなりたい女性像を表現する香りと、似合う香りのどちらをつけたらいいかと聞かれるんですが、女性の場合、まず自分を喜ばせてあげることが大事だと思います。
草場さんだったら、キリッとでも、甘くても似合うキャラクターなんですけれども、ご自身の志向はキリッと路線だから、そちら系のフレグランスを選ぶようアドバイスします。
で、慣れてこられたら、またちょっと気分を変えるようなモードの香りを提案することが多いです。
脳はとてもだまされやすい臓器なので、抵抗感のないフレグランスから入門して、慣れてきたら初めのフレグランスと共通点があって、少しイメージの違うものを使うとなじみやすい。違う香りを使うと、一瞬にして気分を変えることができて便利です。
草場 自分の中で使い分けるのは楽しいですね。メイクでいうと、私は普段ベージュやブラウンを好んで使うんですが、たまにピンクをつけると、すごく心が躍るんですよ。
杏 わかる! リップ、チーク、さらに香りもなんとなく同じような位置にあって、血色感などと直結しているなあと。血色感抑えめでいきたい気分だったら、ブラウンのイメージの土っぽいアーシーな香りとか、ピンクを使いたい気分だったら、ほんのりと女性らしい、紅潮するような香りとか。
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