ものを減らしていったら、余計な買い物がなくなりました。【ショコラさん】
撮影・村上未知、文・嶌 陽子
子どもたちのことを考えて60歳から始めた「老前整理」。
潔く処分した服や家具、毎月のやりくりの成果、日々の食事、休日の楽しみ等々……。ささやかな日常をありのままに綴った「60代一人暮らし 大切にしたいこと」は、多くの読者を持つ人気ブログだ。筆者のショコラさんは、パートタイムで働く63歳。1LDKのマンションに暮らしている。15年ほど前、夫との離婚後に購入したという部屋には程よく家具が置かれ、居心地のよい空気が流れていた。
「今のインテリアが一番落ち着くし、『ちょうどいい』と感じています。置いてあるものは全て必要なものだし、不足しているものもないんです」
以前は多くのものに囲まれて生活していたというショコラさん。数年前、「ミニマリスト」という言葉に出合った。
「そこまでものが少ない生活は、私にはできないと思いました。でも、この先自分がいなくなった後、2人の息子たちに片づけで大変な思いをさせたくない。そう思い、自分なりの取捨選択をしようと決心したんです」
こうして生前整理ならぬ「老前整理」を開始。まず手をつけたのは家具類だ。飾り棚、ダイニングテーブルセット、座椅子など、今の生活に必要ないと思うものを少しずつ処分していった。
「マンションの1階まで運ぶのが大変でした。もう少し早く、もっと体力がある時に実行すればよかったかも」
やがて調理道具、食器、服なども「無理をせず、その気になった時に」、そして「何でもかんでも捨てようとせず、思い入れのあるものは残す」という方針のもと処分。2年ほど経って一段落したが、今でも不要と感じたものは、こまめに手放す習慣を続けている。
「ものを減らしたら、自分が本当に気に入ったものだけが残るように。すごく満ち足りた気持ちになって、無駄なものを買うこともなくなりました」
買いたいと思ったものは、ひとまず書き出してみる。
とはいえ、「今も買い物は大好き」と話すショコラさん。昔からファッション好きで、気に入った服やバッグを買うこともしばしばだ。その際に、まず探しに行くのがインターネットオークション。質の良いものを手頃な価格で手に入れている。
「ただし、何か欲しいと思ってもすぐには買わず、いったん手帳の“欲しいものリスト”に書いておきます。しばらく経ってから見返してみて、やっぱりいらないと思ったらバツをつける。リストは常に更新しています」
100円ショップに日用品を買いに行く時ですら、買い物リストを作って持って行くという。
「一度書き出してみることで頭の中を整理できる。安いからとつい余計なものを買わずにすむんです」
黒字分は翌月に繰り越し、ゲーム感覚で節約を楽しむ。
50代半ばまで正社員として働いていた頃と比べ、パート勤務となった今は、収入がぐっと減った。現在の手取り収入は約12万円。毎月、6万円を固定費に、残り6万円を食費やその他の出費に当てると決めている。正社員時代に貯めたお金は老後の資金に。60歳から振り込まれている企業年金基金などは予備費だ。
「今は家計簿をやめ、日々の食費は月に2万円、外食費や日用品、洋服などの出費に4万円と決め、財布を分けて管理しています。黒字になったらその分は貯金せず、翌月に繰り越す。節約は必要だけれど、そればかりだと侘しい気持ちになってしまうでしょう。なるべくゲーム感覚で楽しみたいんです」
平日の食事は質素に、休日は友人や息子と外食に出かける。図書館でこまめに本を借りてきて読書する。正社員だった頃よりもお金はないけれど、楽しく節約できるコツが分かってきたと話すショコラさん。生き生きとしたその様子から、豊かな暮らしぶりが伝わってくる。
『クロワッサン』1014号より
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