【南 伸坊さん×清水ミチコさん 対談】物真似【1】
日本人が大好きなモノマネ、その面白さの秘密を探ります。
撮影・黒川ひろみ、南文子(南さん「本人術」写真) 文・嶌 陽子
似るために大事なのは、顔の形とかより、結局は表情。(南さん)
不思議なことに、気持ちを入れるとどんどん似てくるよね。(清水さん)
恥ずかしいくらい本人になりきるのが大事。
清水 南さんは、ずっと奥さんが写真を撮ってるんでしょ。私も夫に写真を撮ってもらってるんだけど、撮られているうちに少しずつ「本人になれ」って自分に魔法をかけるんだよね。そうするとだんだん似てくる。不思議なことに、気持ちを入れると全然違うの。
南 服や帽子もそうだよね。自分で「似合わない」と思って着てると似合わないでしょ。自分で「似てないかな」と思ってる分だけ似ないよね。
清水 だから私、顔マネする時は恥ずかしいくらいその人になりきってるよ。片山さつきさん(次ページ)をやった時は、社会に怒ってた(笑)。撮影してると、どんどん気持ちが入ってくるの。
南 あはは、恥ずかしいくらい。うちのカメラマンがいろいろ注文してくるんだけどさ、なんかモヤモヤしてると自分がムッとしてる顔になっちゃう。
清水 ムッとするんだ。「そんなに言うなよ」って。
南 ミッちゃんのダンナは写真を撮りながらそういうこと言わない?
清水 言いますよ。「もう少し似ないか」とか。
南 あはは、それいいね。で、そのうちだんだん「俺、何のためにやってんだ」ってなんだよ。もともとは面白がってやってるのに。
清水 なんか険悪になっちゃう。
南 「なんとか今日中に似せなきゃいけない」って。
清水 何に追い立てられてるんだ(笑)。
南 昔、猪瀬直樹さん(次ページ)をやった時さ、顔を一生懸命作って編集者とうちのカメラマンの前に出ていったら、ちらって見るだけで、何の反応もないの。仕方ないからさらにメイクをしにいって、やり方を変えてみた。猪瀬さんがよく討論番組とかで「だからぁ!」って言うじゃん。もうみんなバカだな、みたいな表情で。そういう気持ちで出て行ったら「おお!」ってなって。
清水 写真、撮ってくれた?
南 うん。やっぱり顔の形とかより、表情だなって。その人がする基本の表情ってのがあるんだよね。それが見つかると、似せられる。
清水 「そうそう、そういう人だよね」って見る人に思わせるんだよね。
南 「この人はこんな顔」とか「この人はこんな声」とか、みんな無意識のうちにその人から何かを受け取ってるんだけど、普通の人はそれが何か、具体的に分かってないから再現できない。その“何か”を顔マネで抽出してあげると、知っていたことを指摘されて「そうそう」って思うんだよね。
清水 モノマネが面白いところって、要はそこなんだと思う。
南 自分がその人のことをどう見てたのか、その人の声をどう聞いていたのかを分かることが面白い。だからもともと知ってることが前提なんです。知らない人のマネは面白くないもん。
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