そろそろ限界越え。“脳”のお疲れ、どうするべき?【症状チェックと脳疲労Q&A】
イラストレーション・Nut Dao 文・黒澤 彩
CHECK! この症状、ひょっとして脳疲労のサイン?
脳が疲れていると表れる、一時的な症状をリストアップ。自分に当てはまるものをチェックして、いくつあるか数えましょう。
集中・思考
□最近、文章を読んでも頭に入ってこないことが増えた。
□仕事や勉強で同じミスを繰り返すようになった。
□以前よりアイデアが出づらく、考えがまとまらない。
□話の内容が途中でわからなくなったり、人の話を聞き流してしまう。
記憶・物忘れ
□人や物の名前がすぐに出てこないことが増えた。
□どこに物を置いたか忘れることが増えた。
□会話の内容をすぐ忘れて、同じことを聞き直したりするようになった。
感情・気分
□ちょっとしたことでイライラしやすい。
□やる気が起きず、趣味や好きなことにも興味がわかない。
□理由もなく漠然と不安や焦りを感じることがある。
身体・生活習慣
□朝起きたときから疲れていて、すっきりしない。
□夜、寝つきが悪かったり、夜中に目が覚めたりする。
□スマホやSNSをダラダラ見続けてしまい、時間を無駄にする。
□甘いものやジャンクフードを無性に食べたくなる。
判定目安
チェックの数が…
3個以下
脳の疲れはまだ軽度。普段の休息や睡眠を意識して、早めにリフレッシュを。
4〜7個
脳疲れが進んでいる兆候。しっかり脳を休める時間を取りましょう。PCやスマホから離れる、自然に触れるなど環境の切り替えが効果的。
8個以上
脳がかなり疲弊している可能性あり。しばらく集中的に脳を休ませる計画を立て、場合によっては専門家(心療内科・精神科)への相談も検討しましょう。
Q どうして脳が疲れるの?
脳だって疲れるのだ。それは、脳のワーキングメモリが過負荷の状態になるから。「前頭前野と海馬とが連携して短期記憶をする、いわば“脳のメモ帳”がワーキングメモリです。その容量には限界があり、一度にせいぜい3〜4つのことしか処理できません。なので、やるべき課題がそれ以上になると負荷がかかりすぎ、脳が疲労してしまいます」とは、脳科学者の篠原菊紀さん。マルチタスクに長けた人もいるが、実は注意力が散漫になっているだけで一つひとつの課題の処理が充分にはできていないことが多いのだという。「さらに、嫌なことや不安、ネガティブな感情などは、ワーキングメモリの容量をより多く使ってしまうので、ストレスを感じているとますます過負荷になりやすいといえます」。科学的にも、ストレス物質であるコルチゾールや体内の活性酸素が増えると、脳疲労につながることが明らかになっている。
Q 脳疲労時、脳はどのような状態になっている?
通常は、集中しているときと休んでいるときとで、脳内ネットワークのオン/オフが切り替えられている。
「やるべきことに集中しているときには課題関連ネットワークが優位に働き、休んでいるときにはデフォルトモードネットワークが優位になりますが、脳疲労が蓄積すると、この切り替えがうまくいかなくなります」。集中すべきときにぼんやりしてしまったり、逆に休んでいるのに頭が冴えたりするのは脳疲労の状態といえそう。
「また、長時間にわたり集中するなどしてワーキングメモリが過負荷になると、自律神経も乱れます。交感神経が持続的に優位になり、心拍変動の低下が見られることもあります」。交感神経と副交感神経の切り替えができなくなれば、脳をリラックスさせることができず、さらなる脳疲労の悪循環になってしまう。過覚醒になることもあるので、「元気だから大丈夫」ともかぎらない。
Q 年齢とともに脳も疲れやすくなる?
ワーキングメモリの機能は、18〜25歳をピークに低下してくる。加齢によって脳が疲れやすくなるのは確か。
「脳の老化には、体じゅうの炎症が関わっています。細胞分裂を停止した老化細胞が蓄積されることで炎症が起きやすくなり、認知機能の低下を引き起こすとされています」。一方で、人は経験によって自分のワーキングメモリの容量に合わせて生活する術を身につけているので、加齢に伴う機能低下が脳の疲労に直結するわけでもないという。
50代前後の女性に特有の問題としては、日常がマルチタスク化しやすいことが挙げられる。仕事に加え、家事や介護など家族の世話が重なる状況は、どうしても脳に負荷がかかりやすい。
「さらに、更年期の影響も出てきます。集中力の低下や感情の揺れといった症状があり、今までと同じ脳の働きができなくなることも。忙しいとは思いますが、睡眠や休息が大切です」
『クロワッサン』1149号より
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