自分に合う香りの選び方や付ける場所など、大人の香水Q&A
いつもとは違う香りを選んで、新しい自分を楽しんで!
撮影・徳永 彩(KiKi inc.) 文・野尻和代
心落ち着く香りとの出合いが私を輝かせる。
経験や思い出に紐づいて、記憶と結びつく香り。自分自身の心地よさや、人からの印象にもつながるからこそ、自分を表現できる香りを見つけておきたいもの。
「洋服では冒険しづらくなってきたけれど、自分らしい香り探しにはすごく興味があります」という料理研究家の大島菊枝さんが、“ジャパニーズフレグランス”を確立した調香師の大沢さとりさんのショップを訪ねた。
「ヨーロッパ発祥の香水は、体臭を魅力に変えて異性をひきつけ、ファッションとしても楽しまれてきました。一方、日本には古くから香道という文化があり、お香が空間を清めるという考えも。私たちにとって香りは心を落ち着けるものだったんです。私はそんな精神性に寄り添い、日本の美しい伝統や情緒をテーマにした香りで、その魅力を伝えたいと思っています」(大沢さん)
そう話す大沢さんが、大島さんの印象から香りをいくつか提案。料理研究家という職業からイメージし、和三盆糖から作る干菓子をモチーフにした香りなど、好みをヒアリングしながら、話ぶりや服装、第一印象などを通して、大島さんらしいものを探っていく。その中でも大島さんの心に響いたのは、“シルクイリス”と“夜の梅”の2つ。
「昔はユニセックスな香りが好きだった私にとって、“シルクイリス”はさっぱりと軽やかで、違和感なくなじむ香り。対して“夜の梅”は、凛としながらもフェミニンなイメージ。最近、和装にも似合う女性らしい香りが気になり始めているのですが、まさにぴったりかも。でも、背伸びしている気がする香りを、選んでもいいのでしょうか?」(大島さん)
「それもよいですし、まずは纏っていて落ち着く、“伴侶”となる一本を持ちましょう。その上で、こうなりたい、見られたいなどの憧れの香りを加えていくと、楽しみが広がります」(大沢さん)
大島さんは、結局、さきほどの2本とも入手。「香水は肌につけるものだからその世界観に浸りやすいし、気分に合わせて香りを選んで、なりきってみるのも楽しそうですね」と言う。
「素敵な人は、自分で自分の機嫌を取るのが上手。香りはその助けになり、自分が心地よくなる香りを纏っていれば、自ずと周りへ与える印象も良くなると思います。50、60代は、また自分のために人生を楽しむステージ! 気後れせずに、いろいろな香りにチャレンジをしてほしいです」(大沢さん)
●パルファン サトリ
東京都港区六本木3・6・8 OURS 2F
TEL.03・5797・7241(電話受付11~16時)
営業時間:月曜〜金曜11時〜17時(予約制)、土曜〜日曜11時〜16時30分(予約不要)
*予約はHPから。https://parfum-satori.com/
大人の香水Q&A
Q.自分に似合う香りの選び方は?
A.香りのイメージを踏まえつつ、好みを探って。
香水を選ぶ時は実際にお店で試して、好きか嫌いで判断することが基本。でも、あらかじめ香りの特徴を知っておくと、自分が求めている香りに辿り着きやすくなる。
「香りのタイプはフルーティ、シトラスなど多様にあり、下記の分布図のように印象が分類できます。例えるなら、〝甘く優しい〟はコットンワンピース、〝爽やかで軽快〟はカジュアルなデニム、〝すっきりとかっこいい〟はパンツスーツ、〝艶っぽく重厚〟はドレスを着ている女性のイメージ。大人の女性はフローラル系の香りが似合うと思います」(大沢さん)
Q.知的な大人の香りの嗜み方とは?
A.季節感やTPOに合わせて使い分けてみよう。
いつもは自分の軸となる伴侶の香りをまとっていても、ときには少し違うイメージの香りもチャレンジしてみたくなるもの。
「洋服のように、季節やTPOに合わせて、香りを着替えてみて。春のおすすめは、甘く優しいフルーティやフローラル系、夏は爽やかなシトラス系。また、仕事の時はユニセックスなグリーンマリン系、夜のお出かけには少し官能的なオリエンタル系など。服が変わるほどわかりやすくはないけれど、むしろ印象に残るイメージチェンジ法かもしれません」
Q.香水をつける場所や量は?
A.体温の高い場所につけ、内側からふわりと。
「服の上から香水をつけると、香りが強すぎます。肌やインナーにつけて、内側から香らせるのが上品です。また、肌が弱い方はハンカチにつけるのもおすすめ」
手首、肘の内側、ウエスト、膝の裏などの体温が高く、動きがある場所に朝、左右1、2プッシュずつつけたら、午後にもう1回つけ足せば充分。
Q.他の香りとのバッティングが気になる。
A.柔軟剤は無香料のものをチョイス。食べ物などのにおいはブラッシングで軽減。
「シャンプーの香りは長時間持続しないものが多いですが、問題は柔軟剤。香水をきれいに香らせるためには、無香料のものがおすすめ」と大沢さん。また、意外と気になるのは髪や洋服についた食べ物のにおい。
「ブラッシングである程度落としてから、香水をつけてください」
Q.第一印象で香水を決めていいの?
A.香りは時間の経過で変化。半日は様子見を。
香水の香りは、時間の経過に伴って少しずつ変化。つけてすぐの5〜30分くらいに立ち上がる香りをトップノート、その後4〜5時間までの香りをミドルノート、そして最後の残り香をラストノートと呼ぶ。
「店頭で試した時は半日くらい様子を見て。時間をかけて選ぶことで、お気に入りと出合えるはずです」
『クロワッサン』1114号より