俳優・坂井真紀さんが考える、この先の「私」に大事なこと
撮影・小笠原真紀 スタイリング・藤井享子(banana) ヘア&メイク・石川奈緒記 文・今井 恵
「ご機嫌で軽やか」。カメラの前で笑う坂井真紀さんを眺めていると、そんな言葉が浮かんでくる。
「今、私は55歳なんですが、40代半ばぐらいから少しずつ大人の覚悟みたいなものができてきた気がします。年齢を重ねていくことに無理に抗おうとしなくていいと思い、いい意味での落ち着きや諦め方が思考の中に生まれ、ちゃんと自分の年齢を咀嚼できるようになったのかな」
なぜそんな思考に変わったのだろうかと問うと、「それには41歳で子どもを持ったことが大きい」と。
「子どもには“自分”というものが鏡のように投影され、否が応でも自分を客観視できるんです。同時に彼女がいなければ、ダンゴムシを見て歩くことも、落ち葉で季節の変化を感じることもなかったかもしれません。新たな人生を一緒に歩ませてもらっているなと」
そんな長女も中学2年生に。
「ひとりでやれることが増え、私も少しずつ自分の時間が楽しめるようになりました。仕事がオフとわかった瞬間、大好きなバスケのチケットを取って見に行ったり、美味しいものを食べに行ったりと、暮らしの中の小さな幸せを噛み締めています」
周りから必要とされることがうれしいし、生きる力になる
坂井さんのバスケットボール好きはかなりのもので、今や高校バスケもチェックし、応援しているという。
「高校時代からプロに至るまでの選手のドラマや1秒で試合がひっくり返るスリリングな感覚。また選手ひとりひとりの表情が見えるスタンドとコートの距離感もたまりません! 好きなプレイヤー、チームもいっぱいだから、まさに『箱推し』ですね(笑)」
もちろん年齢を重ねたことは、プラス要素ばかりとは言えない。
「年々腰が重くなってきていますね。でもあえて自分を奮い立たせる努力もしているんです。疲れが溜まって休みたい、もう少し寝ていたいと思う日も、せっかく午前中に時間があるのなら映画を見に行こうとか。常日頃、娘にも『口角を上げていこうね』と声をかけてます。心が健康で前向きであることが、人として大切だと思っています」
2025年は話題のドラマや映画への出演が続き、多忙だった坂井さん。
「作品に呼ばれるということは本当にありがたいことです。昔と変わって『こういう役をやりたい』という気持ちより、作品に私というピースが必要なら、どんな役でもやろう。必要だと思われることがうれしくて、最大限ここでがんばろうと思うようになりました。周りから必要とされるということは、生きる力になる気がします」
そんな坂井さんに、これから先、豊かに暮らすためには何が必要か聞いた。
「この先、私は大丈夫なのか?と不安を感じることもあります。でもこの年齢になると自分との付き合い方もわかってくる。だから『ま、いいか』と自分を許したり『なんとかなるさ』と励ましたり。そんな中で大切にしたいのは、感謝することや謙虚さ、驕らないことだと思います。身近な憧れだと、亡くなった野際陽子さんが本当に素敵な女性でした。誰にも分け隔てなく声をかける思いやりが本当にうれしくて、野際さんのような女性になりたいなと。私も心と体に向き合いながら前向きに攻めていけたらと思っています」
『クロワッサン』1158号より
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