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考察『豊臣兄弟!』3話 信長(小栗旬)と藤吉郎(池松壮亮)の関係性が垣間見える。そして小一郎(仲野太賀)の初陣へ…

大河ドラマ『豊臣兄弟!』 (NHK/日曜夜8:00〜)は主人公・小一郎(のちの秀長/仲野太賀)と兄・藤吉郎(のちの秀吉/池松壮亮)の兄弟物語。第3話「決戦前夜」では迫り来る今川義元(大鶴義丹)を前に考えあぐねる信長(小栗旬)。豊臣兄弟の新たな目的も明かされ、戦目前のそれぞれの模様が描かれます。ドラマを愛するつぶやき人・ぬえさんと絵師・南天さんが考察する連載第3回です。

文・ぬえ イラスト・南天 編集・小池貴彦

小一郎(仲野太賀)を呼び寄せた真の目的

『豊臣兄弟!』3話イメージイラスト/小一郎(仲野太賀)による和睦の提案は織田信長(小栗旬)に「言葉が軽い」と一蹴される/南天
『豊臣兄弟!』3話イメージイラスト/小一郎(仲野太賀)による和睦の提案は織田信長(小栗旬)に「言葉が軽い」と一蹴される/南天

桶狭間への決戦前夜。
『豊臣兄弟!』第3話は、有名な逸話をアレンジして登場人物たちの内面を描写した。

兄・藤吉郎(池松壮亮)の求めに応じて、直(白石聖)と清須(現在の愛知県清須市)にやってきた小一郎(仲野太賀)だったが、その清須に今川義元(大鶴義丹)率いる25,000人の大軍勢が迫っている。
「海道一の弓取り」と称せられた強大な戦国大名、今川義元。
織田信長(小栗旬)の父・信秀の時代に幾度もの戦いを経て、織田と今川は和睦を結んでいたが、信秀の死後、その均衡は破られた。
大戦(おおいくさ)目前であることを、兄弟は知らない。

藤吉郎は、小一郎を呼び寄せた目的が父・弥右衛門(小林顕作)の仇討ちだと明かした。
その仇とは、城戸小左衛門(加治将樹)。信長直属の側近家臣「六人衆」の一人で、槍の名人だ。
城戸の出世は、戦場で弥右衛門から奪った敵の手柄首がきっかけだと、藤吉郎は言う。
失意のうちに死んだ父の仇を、小一郎と力を合わせて取る。

城戸小左衛門は槍の稽古で、2話と同じ細身で気の弱そうな相手を指名して好き放題に叩きのめす。
次に藤吉郎を指名するのも同じだ。この男、相手を選んでやってないか?
槍の稽古を隠れ蓑に、嗜虐心を満たしているのでは……いや、弱い兵を鍛える目的なら毎度同じ者を選ぶのはおかしくはない。でも倒れた相手を執拗に攻撃するなど、怪我をさせて戦に出られない体にしたら稽古とは言えないだろうに。どうなんだろうなあと思って観ていたのだ。
だが、蔵番の男を恫喝して、酒を奪う場面でわかった。

「戦にも出られぬ老いぼれが、二度と儂に偉そうな口を叩くな!」

はいギルティーーーーーー!!!! 
ただのパワハラ野郎です。

槍の稽古相手も蔵番も、城戸より小柄な男だ。体や立場が弱い者から奪い、虐げる卑劣さ。
藤吉郎が言う、父から手柄を取り上げたという話が真実味を帯びる。
とは言え、兄弟ふたりがかりでも敵わない剛の者を、しかも信長直属の家臣をどう討つのか。

小一郎「刺し違えて死ぬ覚悟はあるんか?」
藤吉郎「あるわけないじゃろ」

ないんか。覚悟はないが、藤吉郎には策はある。

「戦場でなら、騒ぎに乗じて城戸を討つこともできるのではないか。敵にやられたように見せかけるんじゃ。あいつがおとうにやったようにの」

うっすらとした腹黒さを感じる策ではあるが、力無き者が強き者に立ち向かうには致し方ない。ただこの作戦は、戦がなければ実行不可能だ。

兄弟はまだ掴んでいないが、おりしも戦の気配が清須を包んでいる。

動かない信長の思惑は

その禍々しい気配をものともせず、信長は城内で宴を開いている。

信長のお小姓衆が披露するのは、父の仇を討った曽我兄弟を謳う幸若舞か。
ちなみに信長の小姓として有名な森蘭丸(森成利)は、まだ生まれていない。
曽我兄弟の仇討ちが建久4年5月(1193年5月)なので、季節にちなんでの演目だろう。
大河ドラマファンとしては、小栗旬主演『鎌倉殿の13人』(2022年)の「稀なる美談として語り継ごう」を思い出す。昨年の大河『べらぼう』の曽我祭も。

信長は幸若舞にご満悦だが、宴席に招かれた家臣団はそれどころではない。
今川軍は明日にも沓掛城(くつかけじょう/現在の愛知県豊明市)に入るとの情報だ。清須城との距離は約26㎞。
今川方が一気に進軍すれば、半日というところまで押し寄せてきている。
籠城か、打って出るか。家臣団は「殿、御下知を!」と迫るも信長は動かず。

家臣団がいない場では、妹のお市(宮﨑あおい)が信長に和睦を勧める。

「兄上が御望みとあらば、市は喜んで今川の人質となります」「そして必ずや、義元と刺し違えてご覧にいれまする」

お市はこの永禄3年(1560年)、通説では14歳。
戦国時代に武家の女子が人質となるとは、ほとんどの場合は相手方と婚姻を結ぶということだ。
今川義元は42歳でもちろん正室がおり、前年に家督を継いだ嫡男・今川氏真にも関東の雄、北条家から迎えた正室がいる。
今川と織田の今の関係ではお市は側室となるだろうし、和睦が破られれば命はない。
お市自身、義元と刺し違える──死ぬ覚悟で今川のもとへ行くと言うのだ。

信長「義元ごときの首と引き換えにするには、お前はもったいない妹よ」

妹の覚悟を受け取ってなお、信長は動く様子を見せない。

誰もが知るあの逸話!

今川との戦が近づいていると知った藤吉郎は、信長に出陣を説こうと、小一郎を連れて城を訪れた。籠城となったら仇討ち計画が崩れる。なんとしても出陣を決めてもらわねばならない。
一方、戦に負けたら仇討ちどころではないと渋る小一郎。

ここで、豊臣秀吉の出世物語として有名な「草履を温めておきました」の逸話が、小一郎、藤吉郎、信長の人物像をくっきりと描くエピソードとなった。
もともと草履の逸話は江戸時代に出版された『絵本太閤記』(寛政9年/1797年)に書かれた創作であるから、本作でもこうしてフィクションに組み込むのはアリだ。
「そう来たか!」というやつである。

草履を盗もうとした藤吉郎。苦し紛れの言い訳を信長に見透かされる。
それを小一郎が、

「間もなく雨が降りまする! (草履が)濡れてはいけないと思いまして」
「手前どもは長いこと百姓をしていたのでわかるのです。一刻あとに雨が降って参ります」

と持ち前の機転を利かせてフォローするも、
出陣を勧めて信長を激怒させた藤吉郎に「どう勝つのか申してみよ」と無茶ぶりされ

小一郎「勝つ術などないかと」「ですが、負けぬことならばできるやもしれませぬ。和睦なされませ」「今川とてわざわざ血を流すことは望んでおりませぬ」

この進言は、信長をますます激昂させた。
今川が進軍してきたのは、信長が今川方の城である鳴海城・大高城・沓掛城の周囲に砦を築き、攻城に動いたことがきっかけである。これらの城の主は父・信秀の代には織田家に追従していたが、信秀の死後に起きた家督争いの混乱に乗じて、今川義元へ寝返った。

清須の目と鼻の先まで今川勢力に染められた信長にとって、この戦は和睦すれば終わるものではない。織田家の存亡を賭けた戦なのだ。
だからこそ、小一郎の和睦進言は信長にとって軽い。

また、ドラマとして見れば、信長の拒絶は理屈だけではないように思う。
お市から自分が人質になると申し入れがあったが、

信長「(たとえ和睦しても)敵はこちらが到底受け入れられぬことを求めてくれるであろう。それは和睦と言う名の敗北。降伏したも同然じゃ」

この「到底受け入れられぬ」にはお市のことも含まれていないか。
後の場面で、藤吉郎が銃弾に当たった猿芝居をした時に本気で心配した様子といい、本作の信長は、かなり情が深い男なのではないだろうか。

御追従だけではない関係性

草履の一件では、調子の良さと小狡さがコミカルに描かれた藤吉郎。
だが細かなところで、こちらも存外情が深いことが窺える。

「大たわけが!」と信長に合わせて小一郎を怒鳴りつけたものの、信長が小一郎の喉笛を締め上げる横で、いつでも割って入れるよう、気を張っている。
信長が小一郎に失せよと告げたので安堵して、早う去れと促す。

信長が気晴らしに鉄砲の稽古をする場面では、悩みを抱えているためか狙いを外す信長に
「このサルめを狙ってください」とおどけて、心を軽くしようとする。
「これぞ猿芝居でござります」と笑うその顔には、御追従だけではない、信長に対する人としての親しみが浮かんでいる。

心の内に余人の知らぬ情を秘めた、信長と藤吉郎の主従。
これからふたりの関係がどう描かれるのか楽しみである。

「侍がなんじゃ」

草履の場面から感じた小一郎の人物像は、賢さと胆力である。
自分よりも圧倒的に強い者と対峙しても、怯まず己を通す芯の強さと肝の太さは、大きな武器だ。何かあればすぐに刀が振り下ろされるこの時代に、城の主に対して一歩も退かぬのは、並大抵の度胸ではない。
なによりも小栗旬の信長がものすごく怖い。この目に睨まれてよく言えるね、小一郎……と、テレビの前で呟いてしまった。

小一郎の胆力は、城戸小左衛門を前にしても揺るがない。
信長に志がないとまで言われ、腹の底から煮えたぎっている。だから城戸が傲慢な様子で歩いてきても怯えない。すれ違ってから小一郎、

「その木彫りのお守り、ご利益はございますか」

藤吉郎手作りの戦守りと、敵の手柄首を一緒に奪われたのだという父・弥右衛門の話。
小一郎は軽い口調で裏を取る。

城戸「あるのよ、それが。これをつけて初めて敵将の首を取ったのじゃ」
小一郎「へええすごいな。自分で作られたので?」
城戸「いや、もらいもんだ。まるでさえない雑兵だった」

やはり父から奪ったのかと確信を得て、嘲笑いながら城戸を振り返る。

「誰が作ったかは知りませぬが、あまりにも不細工なお守りなので。あなた様にお似合いかと」

殴られようが、構うものか。
侍がなんじゃ。無謀な戦に突き進む城主に、卑怯な乱暴者。
もうつきあいきれんわ、バカバカしい。
このときの小一郎の胸の内に渦巻くのは、そうした憤りだろう。

松平元康(松下洸平)登場!

織田家の侍に見切りをつけた小一郎は、直に中村に帰ろうともちかけるが、直から返ってきたのは激しい叱咤だった。

直「あんたは下剋上に魅せられたんじゃ。それなら今戦わなくていつ戦うんじゃ」
「あんたが侍になったのは、あんた自身のためでしょ!」

他の誰のためでもない、自分のため。秘めた野心を揺り起こされて小一郎が覚醒する。

それにしても、お市といい直といい。
寧々(浜辺美波)、兄弟の母・なか(坂井真紀)も姉・とも(宮澤エマ)もそうだが、今のところ女性がみんな強い。
「戦国乱世ですから強くたくましい女しか生き残れませんよ」と言われればそうなのだが、今後、物語の中で守られる側に収まる女性像が出てきたら、兄弟の目にも視聴者にも、とても新鮮に映りそうだ。

一方、今川方である大高城(名古屋市緑区)への兵糧入れを成功させた松平元康(松下洸平)が、腑に落ちぬ顔をしていた。

「思ったよりも敵の手ごたえがなく、うまくことが運びすぎている」

敵とは大高城の目の前、約800m離れた先にある丸根砦の織田軍勢。
丸根砦には佐久間盛重(金井浩人)がいるはずだ。信長の宴席で織田を見限り、丸根砦に戻って今川方に寝返ると密かに家臣に告げていた男だ。
佐久間盛重から「寝返るから今川方への土産を用意しろ」と申しつかっていた家臣は、簗田政綱(やなだまさつな/金子岳憲)。
桶狭間合戦で手柄を立てたとして、のちに信長から大きな恩賞を与えられる男である。

元康の言葉には、佐久間盛重の内通や裏切りを匂わせるものはない。
これは何かあったなと感じるが、全容はまだわからない。

松平元康、18歳──のちの徳川家康。江戸時代という太平の世を作り上げる者。
松下洸平の元康は、思慮深く勘が鋭く、これまで苦労してきた背景を想像させる。

小一郎の初陣へ

清須城では、丹羽長秀(池田鉄洋)が信長に、松平元康が大高城に兵糧を運び入れ、丸根砦・鷲津砦への攻撃を始めたと急ぎ伝える。
その報告を受けるやいなや、寝所から飛び出してきた信長

「馬を引け。──出陣じゃ」

出陣の報せを受けて騒然とする清須城、支度に追われる藤吉郎がふと手を止めて、ニヤリとする。視線の先には、小一郎。

兄の家に積まれていた具足を身につけ、兄からもらった刀を腰に帯びている。
戦場に落ちていたものだろうが、亡き者から剥いだものだろうが構わない。
覚悟を決めた戦ごしらえだ。
小一郎の初陣である。

永禄3年5月19日(1560年6月12日)の夜明け前。
いざ決戦、桶狭間!

次回予告。
織田信長の運命を、そして日本の歴史を大きく動かす桶狭間の戦い。
豊臣兄弟の仇討ちは成るか成らぬか。城戸小左衛門は実在の人物だが生没年不詳。
これは先が読めないぞ!
第4話が楽しみですね。

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NHK大河ドラマ『豊臣兄弟!』

公式サイト

【作】八津弘幸
【音楽】木村秀彬
【語り】安藤サクラ
【出演】仲野太賀、池松壮亮、吉岡里帆、浜辺美波、白石 聖、坂井真紀、宮澤エマ、大東駿介、松下洸平、山口馬木也、宮﨑あおい、小栗 旬 ほか
【時代考証】黒田基樹、柴 裕之
【制作統括】松川博敬、堀内裕介
【プロデューサー】高橋優香子、舟橋哲男、吉岡和彦(展開・プロモーション)、国友 茜(広報)
【演出】渡邊良雄、渡辺哲也、田中 正

※このレビューは、ドラマの設定をもとに記述しています。

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主な参考文献:
谷口克弘(著)『織田信長合戦全録──桶狭間から本能寺まで』中公新書,2002年.
太田牛一(著)/中川太古(現代語訳・注)『現代語訳 信長公記』新人物文庫, 2013年.
和田裕弘(著)『織田信長の家臣団──派閥と人間関係』中公新書,2017年.
永原慶二(著)/本郷和人(解説)『戦国時代』講談社学術文庫, 2019年.
黒田基樹『羽柴秀吉とその一族――秀吉の出自から秀長の家族まで』角川選書, 2025年.
柴裕之『羽柴秀長――秀吉の天下を支えた弟』角川選書, 2025年.
黒田基樹『羽柴秀長の生涯――秀吉を支えた補佐役の実像』平凡社新書, 2025年.
黒田基樹・柴裕之〔編〕『羽柴秀長文書集』東京堂出版, 2025年.
『豊臣兄弟!』1話イメージイラスト/帰郷した兄・藤吉郎が弟・小一郎を織田家家臣に誘った第1話。柴田勝家に迫られ、藤吉郎が啖呵をきる/南天
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『豊臣兄弟!』2話イメージイラスト/小一郎の住む尾張国中村を悲劇が襲った第2話。しかし、それが出立の転機となる…/南天
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