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産みの苦しみを脱して踏み出す「世界」への大きな一歩──『Prema』(藤井 風)

高橋芳朗の暮らしのプレイリスト。藤井風さんが3年半ぶりのニューアルバム『Prema』を発表。その背景には、普段天才肌に映る彼の意外な苦悩がありました。

文・高橋芳朗

藤井さんの3作目のアルバム『Prema』。先行リリースされた「Hachikō」「Love Like This」に新曲7曲を加えた全9曲を収録
藤井さんの3作目のアルバム『Prema』。先行リリースされた「Hachikō」「Love Like This」に新曲7曲を加えた全9曲を収録

藤井風さんが3年半ぶりのニューアルバム『Prema』を発表しました。既報通り、収録曲は全編英語詞。プロデューサーも全曲に関与する250(イオゴン)を筆頭に海外勢で占められています。

明らかに「世界」を意識した今回のシフト。この重大な局面で藤井さんがどんなモードを披露してくるのか、アルバムのリリースが報じられてから前のめりで待ち構えていましたが、いざ蓋を開けてみると飛び出してきたのはどこか懐かしいサウンド。「Casket Girl」「You」「Okay, Goodbye」などに顕著なように、1970年代後半~1980年代前半のAORや西海岸ロックを彷彿とさせる曲が目立つ印象です。

これまでにもカバーアルバムなどを通じて自らのルーツを積極的に明かしてきた藤井さんですが、自身の曲でここまでてらいなく影響源を打ち出してきたのは初めてのことでしょう。その背景には、普段天才肌に映る彼の意外な苦悩がありました。

「私は燃え尽きていた。何も言うことはなかったし、音楽のキャリアはいつ終わってもおかしくなかった。私が見つけた答えは、私がクラシックと感じるお気に入りの曲でいっぱいの英語のアルバムを作ることだった」

産みの苦しみに苛まれる中、自分が表現に向かう理由を見つめ直すことによって創作意欲を取り戻した藤井さん。会心の『Prema』で窮地を脱した彼の活動は、ここから俄然おもしろくなってくると思っています。

  • 高橋芳朗 さん (たかはし・よしあき)

    音楽ジャーナリスト

    TBSラジオ『ジェーン・スー 生活は踊る』『金曜ボイスログ』などに出演中。共に番組選曲も担当。

『クロワッサン』1152号より

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