フードライター・白央篤司さんとお茶

うつわが好きでよくギャラリーを訪ねるのですが、あるとき「急須を作れる作家さんが減っている」という話を聞きました。「手間はかかるし経験もいるけれど、売れないから。家でお茶を淹れる日本人が減っているからね」と聞いて、とてもさびしい思いに襲われたのです。茶農家さんの廃業も増えているという話も同時期に聞き、もっと需要を増やしたい、「お茶を淹れて飲むのって楽しそう」「うちでもやってみようかな」と思う人を少しでも増やせたら……なんて思いが湧いてきたんですね。そんな思いから、「自分でお茶を淹れて、飲む」の企画を立てました。

お茶好きを訪ねるたび、発見もいろいろ。上質なおいしさはもとより、淹れ方ひとつで日常的な値段のお茶もグンと味わいがアップするのにはびっくり。またお煎茶なら、産地によって味わいはこんなにも違うのかという驚きも。ワインのことは日頃「アルザスが」だの「ブルゴーニュが」だの言っているのにと反省（笑）。日本のお茶の奥深さを取材しながら勉強中です。

この企画ではあえて専門家を訪ねず、日常的に、肩ひじ張らずお茶と付き合っている方々の普段を見せてもらっています。私も最近ようやくお茶とのほどよい距離感が築けてきました。適当に淹れる日もあれば、おいしさ重視できちんと淹れる日もあり。目下、「これだ！」と思える急須を探し中です。